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【映画】白い百日紅(さるすべり)に試練を乗り越える愛を感じる -解夏(げげ)-

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随所に登場する百日紅さるすべり)の花言葉「貴方を信じる・潔白」のような物語

 いつものようにTOMOさんと都内某所のファミレスでエンタメ談義。テーマは(というほど大それたもんではないんだけど)、『原作本(小説でもコミックでも)がある場合の映画化やドラマ化のセオリーについて』だったのだが、その詳細はTOMOさんに書いてもらうとする。で、話の流れで勧めてもらった映画が、『解夏』(2004年1月:磯村一路監督)である。原作はさだまさしさんの短編小説。

 2004年といえば、日テレが麹町から汐留の社屋に移転した年。同年11月に現在使用中のお札(1万円=福沢諭吉,5千円=樋口一葉,千円=野口英世)が新紙幣として発行された。。。そんな年である。

 この映画の主人公、高野隆之を演じるのは大沢たかおさん、恋人の朝村陽子を演じるのは石田ゆり子さん。主な舞台は長崎。キャストもロケーションも抒情的な世界にピッタリである。

  『解夏(げげ)』とは変わった言葉だとお思いになる方に。劇中にも登場する解夏の説明をWIkiから引用しよう。

 安居(あんご)とは、雨期を意味する梵語サンスクリット)を漢語に訳したものである。本来の目的は、雨期には草木が生え繁り、昆虫、蛇などの数多くの小動物が活動するため、遊行(外での修行)をやめて1か所に定住することにより、小動物に対する無用な殺生を防ぐことである。夏安居の修行を終えるのを解夏(げげ)という。

 解夏の意味するところは、この映画を観ればよーく解る。

 

 生徒からも同僚の先生からも信頼されている小学校教師の隆之(大沢たかお)が、ある日突然、ベーチェット病を発症する。ベーチェット病の症状は個人差があるが、隆之の場合、近い将来失明の恐れがあるという。恋人の陽子(石田ゆり子)は、仕事でモンゴルに長期滞在中。そこで、隆之は陽子の父に婚約解消を申し出る。父親から隆之の話を聞いた陽子は日本へ急遽帰国。ここから二人の物語が淡々と描かれていく。…というあらすじだ。

 

 坂道と雨の多い長崎の景色、優しさのある長崎弁がおおよそ暗くなりがちなストーリーに人情と温かみをのせてくれる。穏やかな物語である。

 

 順風満帆の人生を歩んでいた一人の青年に起きた悲しい現実。視力がだんたん失われていく恐怖、失明を受け入れるまでの葛藤。このような思いもよらない運命は、けっして他人事ではない。誰にだって起きる可能性はゼロではない。

 それまで当たり前であったことが当たり前ではなくなる、、、ことへの恐怖は計り知れない。それでも命ある限り生きていかなければならない。この物語も、以前の記事で書いた『喪失-悲嘆-回復』までのプロセスを描いているのだ。

 そして喪失からの回復には、かならず誰かの存在が重要なカギを持つ。人はけっして独りでは生きていけない、つまり大切な人との繋がりが生きる力を与え、前へと背中を押してもらうのだ。…お互いに。

 映画では、隆之を懸命に支える陽子が彼を失望の淵から救い出す。その姿は純心でひたむきである。ほかにも幼馴染の輝彦(田辺誠一)、博信(古田新太)、母親の聡子(富司純子)などが、優しく温かく彼に寄り添う。そして、なんといっても聖福寺の住職であり大学で郷土史を教える林茂太郎(松村達夫:寅さんのおいちゃん)が劇中で語る「解夏とは失明する恐怖と闘うあなた(隆之)にとって、失明すると同時にその恐怖から解放される日」という言葉にジーンとくる。

 

 ここで考えたいのは『人との関わり』である。なんだかんだで人とのつながりが生きていくうえで大切なのだ。自分ひとりで生きてきたようなつもりになっていたってそんなわけはない。誰かに支えてもらって、誰かに助けてもらって、結果、生きているのだ。・・・ということを、けっして忘れてはならない。

 中島みゆきの歌じゃないけれど『ひとり上手』をイケてると思うのは自由だが、だれもひとりぼっちで生きてなんていない。のだから「独りで生きていると思いなさんな」と言いたい。

 自分が思春期の頃、よく親に「一人で大きくなった気になるな!」と言われたものだが、実際、子育てを経験するとつくづくそう思う。我が家のJKからも一人でここまで成長したと思い込んでいる風の発言を聞く。幼児が抱く万能感よりは進歩しているのだろうが思春期とはそういう年ごろなのだろう。私は、そんなJKを見ながら「今のうちに言っとけ!」と心の中でつぶやき、笑い飛ばすほかない。彼女らが大人になって社会に出て、辛酸をなめたり痛い経験を重ねていきながら、身の丈や限界を知って「人は一人では生きていけない」本当の意味を理解するのだと思うから。

 

 さて、映画そのものの感想はというと、ストーリーは良かったが、演出部分はもう少し登場人物の心情を大事に余韻を使ってほしかったなぁと思う。カット割りが唐突で余韻を味わいたいところだったのに、ヒョイと次のシーンに入ってしまうと目が覚めちゃうような感覚になってもったいないところが随所にあった。これがこの監督の手法?なのかもしれないけれど。「なんでかなぁ?」と思い、磯村監督の経歴を調べてみたら、もとはピンク映画のご出身とのこと。それで納得。あっ、私、そんなにピンク映画を観てるわけじゃないけどね!

 

★みじん子レーダー【映画】解夏

●ドラマティック度:★★★★☆

●鑑賞後の心地良さ:★★★★☆

●ドラマの重量感:★★★☆☆

●涙活度:★★★☆☆

★淡々とした中に青年の苦悩と葛藤と恋人の純愛が織り交ざった優しい113分