【映画】タイムスリップ系ドラマの王道?! - コーヒーが冷めないうちに -
タイムスリップ系ドラマはいろいろあって、昔からヒット作がたくさんある。思い返してみると、私にとって最初にハマったタイムスリップ系ドラマは『時をかける少女(by原田知世)』だ。当時の原田知世がなんとも謎めいた雰囲気のある美少女で、ユーミン作詞作曲の主題歌もすごく良かった。その後、『バック・トゥー・ザ・フューチャー』に夢中になり、近未来に自分の夢を重ねた。・・・当時見た未来が今だと思うと、自分の中身はなんとまあ何も変わっていないことか(涙。
人は懸命に(今)を生きているつもりでも、過去に引きずられたり、未来に夢を描いたりしてしまう生き物なのだろう。
もし、過去が変えられたら・・・
もし、未来に行けたら・・・
そんな願いの「たられば」に、浮かない現在を慰めてしまうのは仕方のないことである。
ということで、『コーヒーが冷めないうちに』は2018年に公開された作品。原作本がヒットしたようだけれど私は未読なので原作と比較はできないが、これはタイムスリップした4人のそれぞれの人間模様が、とある喫茶店で展開される。主人公の時田数(有村架純)が淹れた「コーヒーが冷めないうちに」過去に戻ることができるという不思議な客席に座った人のそれぞれの過去を通して、変えられない現実に向き合いながら今を生きていくしかないということを思い知らされる物語だ。
過去に戻れる客席に座った4人の物語はぜひ、映画を観て欲しいと思う。私はどのストーリーも泣いた(元来、涙腺最弱です)。
そして、問いたい。「あなたに戻りたい過去はありますか?」
きっと、誰もが過去のいろいろな出来事に多少なりとも後悔したりして、あの時に戻ってやりなおしたいと思うものだろう。今という現実が過去から繋がっているならば、今を変えるために過去に戻りたいと思うこともあるだろう。
でも、この映画は「過去に戻っても、現実は何も変わらない」のだという。
物語のキーパーソンとなる、過去に戻れる椅子に座り続ける夏服の女性(石田ゆり子)は、「コーヒーが冷めないうちに」飲み干すことを忘れ、幽霊となって居続けているとのこと。彼女は常に本を読んでいるのだが、後半になると、その本が『モモ』(ミヒャエル・エンデ)になっている。
『モモ』といえば、「時間どろぼうと盗まれた時間を人間に返してくれた女の子のふしぎな物語」である。つまり、幽霊となって居続けたのは時田数の母親であり、時田数が母親を求める強い思慕の念が幽霊となってとどめていたのだ。・・・ということが、映画の後半で分かる。
思いを断ち切るとまではいかずとも、過去に抱いた思い(あえて念と言おう)に囚われていると、今を生きることができず、ただただ(済んでしまった)過去の中に生きているようなものだということをこの映画を観て思うのだ。これが『モモ』でいう時間どろぼうなのであろう。
現に、時田数が過去に戻って母親の思いを知り、ある意味のグリーフケア(喪失からの回復)がなされると、母親の幽霊は消えた。
熱い思いってのはいいけれど、これって人に向けるものじゃあないのかな。あ、でも、それを言っちゃあ『101回目のプロポーズ』が成立しない。難しいものだ。
念というのは通じることもあるからいいようで、、、そうでないようで、、、。念を向けられて迷惑なこともあるわけだし、でも、念が通じていいこともある。
ひとつ言えることは、過ぎてしまった終わってしまった過去に対する念は無用だということだ。過去は過去として、自分と折り合いをつけることで「終わったこと」にしなくちゃあ前へ進めない、進まない。
痛い思い出も、苦い思い出も、いろいろあったけれど、それらをひっくるめて今に至ったわけだから、どれもかけがえのない出来事だ。そう心から思えた時、心が痛む過去はすっかり消え去る。
それにしても時田数(有村架純)の相手役の新谷亮介を演じた伊藤健太郎くんが出ている純愛ストーリーを見るのは初めてだったので、違った意味でも心地良くてキュンキュンした。伊藤健太郎くんはイケメンなんだけど、気取ってない感じの自然体が好きなんだけど、こういうのもいい。
★みじん子レーダー【映画】コーヒーが冷めないうちに
●ドラマティック度:★★★☆☆
●鑑賞後の心地良さ:★★★★☆
●ドラマの重量感:★★★☆☆
●涙活度:★★★★☆
★過去は人生の肥やし。今を生きることに輝かしさを感じる117分