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【ドラマ&映画】寅さんよ永遠に!-少年寅次郎&『男はつらいよ お帰り 寅さん』

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困ったことがあったら、寅さんを呼びたい…

 子供のころ、正月になると家族で隣町の映画館に足を運び『男はつらいよ』を観るのがしばらく恒例だった。なぜ、寅さんを家族そろって正月に観に行ったのか、理由は分からないが、それがある意味、我が家の正月行事だったのだ。

 当時、私は小学生。それでも『男はつらいよ』を存分に楽しみ、笑いながら、ときに涙を流しながら、「やっぱり、寅さんはいいよねぇ~」と帰りがけに家族と話したことを覚えている。老若男女に愛される映画だった。

   そんな寅さんが第50作品目として令和の時代に「帰ってくる!」ということで、NHKではドラマ『少年寅次郎』が全5話で放送された。

 昭和生まれの私だけでなく、平成生まれのJKも少年寅次郎に心を温められた。ぜひ、ぜひ観て欲しい。

 

『少年寅次郎』は寅さんの生い立ち、そして少年時代を描いた作品。主人公は寅次郎の育ての母親、車光子(井上真央)である。原作は山田洋二監督の『悪童 小説 寅次郎の告白』だという。『男はつらいよ』で数々のエピソードを残した寅さんが、なぜ、寅さんだったのか…ドラマ『少年寅次郎』を観て、とても腑に落ちる箇所がある。

 寅さんがなぜ「フーテンの寅」になったのか、数々のヒロインたちの心を掴んでおきながらヒョイッと彼女らの好意をすり抜けるように去ってしまうのか、『少年寅次郎』を観ると『男はつらいよ』の切なさが倍増する。

 人は親からの絶対的な愛情と承認、つまり健全な愛着関係が築かれてこそ、幸せをつかむ力が育まれるのだ。旅先で出会うヒロインたちに育ての母の面影を重ねて献身的に尽くすが、彼女たちから直接、愛情を向けられそうになると「おいらなんか...」と逃げ出してしまう。彼の愛情深い部分は育ての母の光子、そしておいちゃん、おばちゃんの存在だ。一方で、自分に自信を持つことができず、ダメな自分でなくちゃならないと思い込んでいるような節は父親である車平造(毎熊克哉)の影響だろう。

 おいちゃんこと車竜造(泉澤祐希)と平造はともに出征している。とくに、父親である平造の戦争によるトラウマは酷く、理由は戦地で「我が子と同じくらいの子供を戦地で殺した(かもしれない)」というものだった。本来、平造は酒飲みで女遊び(よって寅次郎が生まれる)もする今でいうゲス野郎である。そんな大人になりきれていない彼のキャパをはるかに超える過酷な状況(戦争)を経験したのだ。復員して家に戻ると、光子との間の娘(さくら)に対して怯えるようになり、愛情を注げなくなるのだ。

 『戦争』という誰にとっても不幸な出来事がベースにあるので、あんなに明るい寅さんだというのに、寅さんに登場する人たちの背景は単に明るいだけではないということを知るのだ。・・・だから、戦争を知らない世代こそ観た方がいい。

 とはいえ『少年寅次郎』で演じた子供時代の寅ちゃん、そして柴又の人たちが本当に優しくて前向きで…ほっこり笑えるところがたくさんある喜劇なので、ぜひオススメしたい!

 

・・・ということで、『少年寅次郎』を観たJKが『男はつらいよ』も観たいと言い出したので、我が家に1名いる超寅さんフリークも誘って3人で年末の映画館へ足を運んだ。

www.cinemaclassics.jp

 映画『男はつらいよ50 お帰り寅さん』は、寅さんの甥っ子である諏訪満男(吉岡秀隆)の物語を中心に、満男が時折、寅さんを懐かしむという形で、過去の『男はつらいよ』のシーンが上手に織り込まれている。

 しかも満男のかつての恋人、相思相愛でいながら結ばれることのなかった及川泉(後藤久美子)の再会から物語がスタートとするのだから心憎い。

 あぁ、ゴクミ。綺麗だったイズミちゃん。アレジの妻…。あぁ、ゴクミ…。

 うぅ・・・なんであの二人は結ばれなかったんだぁ~(涙)という口惜しい思いは、きっと満男と泉の二人が誰よりも強く思っているだろう。

 

 満男と泉のドキドキするような再会で、二人がどうなるのかは映画を観てね!とにもかくにも、いろんな場面で寅さんやおいちゃん、おばちゃん、タコ社長、御前様…等々、懐かしいみなさんと再会できるので、寅さんが好きな人にはたまらない。

 一緒に観に行った寅さんフリークは、どのシーンも頭の中で先にセリフが出てきた!と喜んでいた。一方、JKは『少年寅次郎』を観ただけでも「すごく良かった!」と。寅さんはどこからでも楽しめる。

 寅さんを育んだ柴又の人たちは、今ではすっかり失わせた地域コミュニティである。近所の人たちがまるで家族のように介入し、家に入り込む。柴又帝釈天という地域の拠点には、誰もが親しみ尊敬する御前様がいる…。子供が悪さをしたら、だれもが叱るし、げんこつも出る。今ではクレームものだが、誰も文句は言わない。なぜなら、そこには確かな愛情があるからだ。そんな地域で育まれたからこそ、寅さんは「どうせおいらはヤクザな兄貴」であるが人情深く優しさにあふれた人物になったのだろう。

 

 師走で忙殺され、心身ともに疲労困憊しそうな年末が寅さんのおかげで心温まるものになった。ちょうど『男はつらいよ』を観に行くという話が出たのにはちょっとした話の流れがある。午前中に我が家の寅さんフリークと一緒に用事があって出かけた時のこと、彼が、

「俺、最近なんだか、知らない人が突っかかってくるような出来事が連発してさ…」

 話を聞いてみると、出勤時の横断歩道で、電車の中で、買い物で立ち寄った店で…、知らない人から怒鳴られたり、列を割り込まれたり…などと、イラッとするようなことがここ数日間、1日一度は必ず遭うのだと言う。

 そこで私は言った。

 「そういう同じようなことが繰り返されるっていうことはね・・・、試されている!っていうことなんだよ」

 と。「自分の器の大きさを試されている」のだと。

 そういうイラっとする出来事を「些細な事と笑い流せる器の大きい人になれているかって試されているんだよ」。そういうと、彼は「じゃ、俺、ダメじゃんか」と笑った。そこで私は、「だからだよ。そこをクリアしない限り続くわよ!そんなこと笑って受け流せなければ、神様は何度でも試すようなことを仕掛けてくるんだから!」とドヤ顔で言ってみた。・・・ホントは何の根拠もないんだけどね。

 彼は私のその言葉に珍しく深くうなずいて納得し、

「そうかぁ!」と。そして、

 

「そうだよな。だからお前と結婚して俺はずーっと神様に試されているんだな」と。(爆笑!)

 

 私に対する自分の切り返しにいたく満足したのか、キメ顔からの勝者面、つまり満面の笑顔を私に見せつけてきた。

 ということで、そんなオチがついたタイミングでたまたまJKからLINEで『寅さんを観に行きたい』というメッセージが届いたので、じゃあ、我々がそれぞれ優しくてあたたかい人間に成長できているか試そう!と急遽、『男はつらいよ』を観に行くことになったのだ。

 

 寅さんを観て「あぁ、いいねぇ」と涙を流せる幸せに感謝しないとね。

 

★みじん子レーダー【映画】男はつらいよ50 お帰り 寅さん
●ドラマティック度:★★★☆☆
●鑑賞後の心地良さ:★★★★★
●ドラマの重量感:★★★☆☆
●涙活度:★★★☆☆

★平成生まれの人間も存分に楽しめた寅さんワールドの116分