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【映画】だれだって美しくて優しいのがいい - ヴィクトリア女王 最期の秘密 -

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恋愛というより親愛を感じる二人の関係

 私は世界史にはめっぽう疎いが、ヴィクトリア女王という名前くらいは知っている。フランスブルボン王朝最盛期の象徴であるルイ14世太陽王と言われたように、ヴィクトリア女王大英帝国最盛期の象徴であり、歴代最長の在位期間を誇った(ただし、現エリザベス2世が現時点で最長を更新)初代のインド女帝である。

 そのヴィクトリア女王が晩年、インドからやってきた青年に大いに入れ込んだという史実に基づいた映画が『ヴィクトリア女王 最期の秘密』である。今年の1月に日本で公開された作品だ。

  1887年に開かれたヴィクトリア女王即位50周年記念式典で記念硬貨を贈呈役としてインドから派遣されたアブドゥルが、女王の目に留まり使用人として取り立てられる。やげて、女王はアブドゥルからインドの言葉や文化、習慣などを習い、ムンシ(先生)と呼ばれるまでに。

 周囲は地位や名誉のことで頭がいっぱいな貴族たち。彼らにほとほとウンザリしていた女王にとってアブドゥルは(外から流れてきた新しい風)のようなものだったのだろう。二人の信頼関係はどんどん深まる一方で、周囲からの嫉妬ややっかみ、いやがらせを受ける。皇太子がアブドゥルの身上を調べると、実はインドでは下層民だったことが明るみに。それでも女王はアブドゥルを離さない。ついに「女王はご乱心(精神に異常をきたしている)」とまで言われる。

 老いて病床に伏し死を覚悟した女王は自らの死後に起きるアブドゥルへの迫害を恐れて帰国を促すが、彼は最期まで付き添うことを約束する。息子エドワード7世が即位すると、この事実は歴史から消されたという。ざっと、こんなストーリーである。

 

 どうやら最近になってアブドゥルの日記が出てきたらしく、歴史研究者たちが二人の関係を紐解いているらしい。そんな中で出来上がった映画だ。

 

 話は変わるが、ちょうど昨日、日本では「即位礼正殿の儀」が行われた。朝から降り続く雨で気の毒だと思っていたらちょうど式典の時に雲の間からお日様が出た。どうやら、東京の空には虹が出たらしい。「さすが、ゴッドオブジャパーン!」だと感動したが、そんなお気楽な自分とは違って、皇室の方々は自由を制限された中で国民の象徴としての働きに人生をかけるのだから大変なのだろうな、と思う。伝統や家柄、身分に縛られて生まれてくる人がこの世にはいる。いい意味でも、そうでない意味でも…。現代は世界各国で人権を考えるようになったので人種や身分制度による差別はだいぶ減ったけれど、それでも実際には平等なんてのはないし、上位層であるロイヤルファミリーというものはいろいろな国で存在し、ある意味国をあげて守られている。その是非を語るつもりはないけれど、そういう世の中であることは事実だし、差別というか区別意識は無くせない。

 そのような中で、人種や身分、宗教(アブドゥルはムスリム)に隔たりなく一人の人間を見ようとするヴィクトリア女王の高貴でフラットな物事の考え方がとても魅力的だ。そして、このような特別な身分であるゆえの孤独感は、私たちのような自由人には想像がつかない苦しみなのかもしれない。それは、身分の上に胡坐をかかず、実直でまじめであればあるほど…。

 

 で、とても下世話なのかもしれないが、映画でヴィクトリア女王とアブドゥルの関係が綴られているのを見ると、女優の森光子とヒガシとか、黒柳徹子とマッチみたいな関係を思い出すのである。業界として実績も積んで、先輩もいない(年齢的に)し、ある意味、芸能界の女王みたいなもんじゃないですか。彼女らが大切にするのは、自分よりうんと年下で優しくてかわいい(彼)。地位とか名誉とか先輩とか後輩とか、そんなくくりを軽く超えたところにいるボーイフレンドである。それは恋愛相手ではなく親愛関係であり、同性同士ではこの欲求を満たせない。どこか心ときめく相手であることが大事なのだと思う。

 何歳になってもハートだけはときめいていたいものなのだ。そういう馬が合う関係、ご縁はなかなかないからこそ、掴んだら放したくない気持ちは十分に分かる。

 恋愛ではない。親愛である。

 なるほど!歳を重ねて欲しいものは、恋心ではなく、親心や友愛に近い関係なのかもしれない!笑

 私が若いアイドルや俳優さんたちにキュンキュンするのは、きっとヴィクトリア女王がアブドゥルに抱いた感情に近いのだ。だって、アブドゥルは背が高いしイケメンな若者である。しかも無邪気なところもあり優しく、博学である。これなら付き人にしたくなるでしょう。しきたりやきまりでいっぱいの皇室の人たちの中にそんな面白い人はなかなかいない。そりゃ女王の(お気に)になるよね。人はね、やっぱり一緒にいて面白い人といたいのよ。身分なんて関係ないのよ。楽しい人といたいのよ。歳をとってセクシャリティなんて枠が外れたらなおさらっ!どんどんシンプルな人間関係だけで満足したいと思うのである。

 あーあ、女王がご存命なら話に花が咲くのにな…。

 

★みじん子レーダー【映画】解夏

●ドラマティック度:★★★★☆

●鑑賞後の心地良さ:★★★★☆

●ドラマの重量感:★★★☆☆

★聞き取りやすいきれいなロイヤルイングリッシュもいい。温かい人間ドラマの112分