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【映画】ゲゲッ!だけど、これが人間の性質。JCやJKの教材に使いたい - 女々演(じょじょえん)-

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わたし、キレイ…?が名文句の口裂け女より実は怖い女子高生のリアル

 何の気なしにTSUTAYAで借りたDVD。今、人気急上昇中の若手女優の福原遥ちゃんの初主演作品『女々演(じょじょえん)』をウチの現役JKと鑑賞した。これがいろんな意味で面白かったので、ここで紹介したいと思う。

 

 舞台はとある共学校の演劇部。部員はたったの6人、女の子5人と男の子1人である。演劇部が最も盛り上がるであろう学園祭を目前に『白雪姫』の準備が忙しい。主役の白雪姫を演じるのは、だれもがうらやむハーフ美少女のひかり(玉城ティナ)。廊下に掲示された白雪姫のポスターが、男子生徒に盗まれないのが不思議なくらいだ。

 そのひかりがなんと、学園祭3日前に「東京のオーディションに行かなければならなくなった」と突然退部する。残された部員たちは急に代役を決めなくてはならなくなり、突如噴出する女子のおぞましい人間関係。「マジか?!」と思うような人間模様がえげつなく、しかもリアルに描かれる。

  それまで一見、仲良しで団結していたように見えた演劇部の女子たちが、主役の女子一人が抜けただけでなぜここまで激震したのか?ここに、今、世間で語られる「スクールカースト」が見え隠れ、、、いや、モロ見えしているのだ。

 ・・・ということで、JCやJKの子供を持つ親も必見。「あぁ、こんなコミュニティーの中に我が子がいるんだなぁ」というのを知っておくのは悪くない。なぜなら、一緒に観ていた現役JKが悲鳴を上げながら、「これってありよりのあり~!」(訳:あるかないかと聞かれたら極めて「ある!」)というのである。テレビや子供たちからしきりに「スクールカースト」という言葉が言われているのに、昭和世代の私はそのカースト制の意味がイマイチしっくり理解できていない。だからこそ知っておくべきであろう。(あ、でもね、この映画を観たら「ママ友カースト」ってのもありよりのありだな~っての思ったけど。笑)

 この映画を鳥肌を立てながら観てスクールカーストの仕組みを知ると、私のような人間は「なんと馬鹿馬鹿しいことにエネルギーを費やしてるんだ?!」と正直、思う。でも、呆れるだけじゃ意味がない。彼らの生態、、、いや、人間の生態、性質というものを無視していては自らの価値観や理想論の物差しだけの近視眼的な生き方しかできないので、やっぱり「人を知る」という意味で、この教材(映画『女々演』)は面白い。

 

 学校でだれもが白雪姫に適任だと疑わなかったひかり(玉城ティナ)が抜けた演劇部に残されたのは、部長の沙彩福原遥)、部員の蒼生(矢倉楓子)、胡桃(小野花梨)、美紅(齋藤美咲)。ひかりは学校でも美人だと注目され、ヒエラルキーの上位である。そのひかりが抜けた演劇部は、一気にカースト下位に転落。・・・つまり、もともとさえないたった4人にヒエラルキートップのひかりがいたために演劇部が華やいで見えていたのだ。

 ひかりが抜けて急遽「代役を決めよう!」ということになると、プライドの高い沙彩は部員の投票で決めようと宣言する。なぜなら、全会一致で自分が投票されると心の底で思っていたからだ。

 ところが開票してみると、沙彩と胡桃が投票数。胡桃は地味な女の子だがこれまで真面目に演劇部で練習を重ねてきた子である。胡桃はもちろん白雪姫なんていう大役は自分にはできないと遠慮するが、周囲は「そんなことはない!」と説得する。一方、主役にすんなり決まらなかった沙彩は機嫌を損ね、胡桃が遠慮しても「じゃ、私がやる」とは言わない。結局、公平にくじ引きにしようということになり、当たり(主役)を引いたのは部員の中で最も主役に向かないヒエラルキー最下部に属するキャラクターの(あえて、えげつない表現を避ける)美紅だったのだ。周囲は、それはさすがに「無理!」だと遠慮するかと思いきや、美紅の口から出たのは、「ヨッシャーッ!」という言葉とガッツポーズ。沙彩は遠回しに「アナタには無理だから自ら降板しなさい」というが、美紅はそんな沙彩に耳を貸さない。必死にセリフを覚える。

 

 この一連のやり取りの裏でSNSの友達グループで裏会話が展開される。まずは、部員全員のグループ、つぎにひかりを除いたグループ、さらに、ひかりと沙彩を除いたグループ・・・。こうして、表面上の関わりと、裏側の関りが、入り乱れて展開されるのだ。こわーーい!

 

 そりゃね、社会に出ればいろいろなヒエラルキーを身に染みて感じることに出くわしますよ、正直。でも、それを気にしても仕方ない、最初からそんなことに関心を持たずに我が道を生きられるタイプのB型人間(あ、これもB型に対する偏見?)にとっちゃ、そんなことを考える時間があれば自分が楽しいと思う方にエネルギーを注ぎたくなるので、こんなにえげつない世界が展開されることはおおよそ気づかずに生きてこれた。でも、、、今まで生きてきて、いろいろな場所に身を置いて漏れ伝わったことよれば、学生時代のスクールカースト的な人間関係というのは、いつの時代も、大人になっても展開されてしまう悲しい生き物、、、が人間なのだ。

 しかも「映え~」や「盛り~」のSNSが当たり前の世代だ。プライオリティの上位に(見た目の良さ)がランクインする。見た目、つまり表面的なことである。「外見より中身で勝負」という言葉はもう理想論なのか?!単なる、カワイイとかキレイという評価でグループ内での順位づけがされるのは非常に浅はかなのだが、彼らにとっては学校生活を作用する死活問題である。

 そこを、いやらしーく、でも、深刻になりすぎないコミカルなタッチで描いている『女々演』はうまくまとめられている映画だと思う。若い子ばかりが出ている軽い学園モノではなく、ちゃんと人間のエグイ生態がJKの会話と共に展開されている。

 

 面白い。し、ちょっぴり「マジか?!」と思う。「ヒエーッ!」「キャーッ!」と悲鳴を上げている現役JKと一緒に観ていて、これはJCやJKたちの教材にオススメの作品だと思った。

 少子化だしね。・・・昔とは育てられ方も違う今の若者たちが、周囲からの称賛を得たがっていることはSNSなどを見ても解るし、実際、学校という集団の中でも「我こそ主役!」だと心から思い込んでいる子が多いらしい。だれもが主役で自分の人生を生きているということは当たり前なんだけど、彼らが気にする「主役」とは(周囲からも主役だと承認されること)が含まれるから厄介なのだ。自分に自信があるのは素晴らしいことだが、ちょっと間違えるとすぐに周囲から浮くのがこの世界の特徴である。なぜならみんなで主役を取り合っているからだ。裏側で語られる残酷な中傷は、本人が気づかなければ幸せの主役のままでいられるのかもしれないが、たぶん、主役として舞台に上がっているつもりであろう人物を羨望の目で見ている人は皆無。つまり、一人芝居なのだ。

・・・そんな、恐ろしい世界。学校という独特の世界では、この恐ろしき世界に身を置き、少しずーつ己を知り「あ、自分は(この集団における)主役じゃないんだ」を知り、、、大人になっていくのだ。

 

 あ、でもね、これって大人になってもいつまでも主役でい続けたい人というのは一定数いる。これ、きっと一生主役のままだ。で、本人が主役になりきって楽しんでいるならそのままにしておけばいいのではないか、というのが私の見解。

 

★みじん子レーダー【映画】女々演(じょじょえん)

●ドラマティック度:★★☆☆☆

●鑑賞後の心地良さ:★★☆☆☆

●ドラマの重量感:★★★★☆

★人間という生き物のえげつなさを女子高校生を通して考える教材ドラマのような76分