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【映画】生きる意欲について考えたい - 閉鎖病棟 それぞれの朝 -

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死刑執行後に息を吹き返すという衝撃的なシーンから始まる・・・

 死刑執行後に息を吹き返し、精神病棟で余生を送る秀丸笑福亭鶴瓶)、普段は落ち着いているものの発作のように起こる激しい幻聴に苦しむチュウさん(綾野剛)、義父による性的虐待とDVで心身ともに傷きながら病棟に居場所を求める由紀(小松菜奈)、この三人の生きざまが中心に描かれる、とある山奥の精神科病院の物語が『閉鎖病棟 -それぞれの朝-』である。原作は精神科医である帚木蓬生(ははきぎほうせい)氏が書き下ろした小説『閉鎖病棟』で、第8回山本周五郎賞を受賞した作品である。

 

 閉鎖病棟という重々しいタイトルのとおり、ありふれた生活を送る我々にとって特別な場所のように感じるそこは、精神を病む人たちが治療と称して社会と隔離された場所だ。 

  秀丸笑福亭鶴瓶)は処刑時の衝撃で脊髄を損傷し車いす生活だが、病院の敷地内に設けられた陶芸小屋で日々、焼き物をつくって過ごしている。穏やかなその風貌からは、かつて死刑囚であったことなどみじんも感じることがない。この陶芸小屋は入院患者たちにとってちょっとした息抜きの場にもなっていた。のだが、ここ(精神病棟)も小さな社会なのだ。心を病んでいても完全な管理下の下でも人間関係でトラブルが起きる。

 結局、その小さな社会におけるトラブルから院内である殺人事件へと発展するのだが、事件そのものよりも登場人物たちの心理描写のほうに焦点が当てられていたので、サスペンスや事件モノなどではなく人間ドラマに終始していて見応えがあった。

 

 秀丸笑福亭鶴瓶)は、過去に起こした罪を背負いながら由紀(小松菜奈)をその命を懸けて守ろうとした。命を殺めた者として今度は命を救おうとしたのだ。が、皮肉にも、また殺人を犯すことになる。

 映画の最後のシーンは壁の中。車いすから立ち上がろうとするその姿は生きようとする意欲が感じ取られ、その意欲のもとには由紀やチュウさんたちの存在があるはずだ。

 

 誰かから自分の存在を求められているという実感があってはじめて生きることへの意欲が湧いてくる。それはだれでもいい。社会でもいい。自分が生きている意味を実感できることで、人は「善く生きていきたい」と思うのではなかろうか。

 マザー=テレサが「愛の反対は無関心」と言ったがこれはまさに真実で、自ら死を望んでいた秀丸が最後に見せた生きることへの意欲は、私たちが何を大事にして生きていくことが幸せへとつながるのかを教えてもらった気がする。

 

 ちょうど元KARAのク・ハラちゃんの自死のニュースが飛び込んできて、かつてハマった冬ソナのパク・ヨンハくんの自殺の時を思い出してしまった。韓国の芸能人は本当に自殺のニュースが多い。韓流芸能通の人に聞いたのだが、有名人に対する誹謗中傷、とくにSNSによるものがものすごいらしい。亡くなった後でも平気でディスっているなど信じられないのだが、なぜ、傷つけることをエネルギー源にするのだろう。

 仕事とか学校とか家事とか育児とか勉強とか・・・日々のルーティンの中に楽しいことは少ない。だからこそエンターテイメントというハレの場を味わうことで私たちは、難しいめんどいことなど忘れて「ただ楽しい!」と歓喜するのだ。ライブやコンサートで元気をもらい、演奏や歌で励まされ、、、本を読んで、映画や舞台を観て、、、エンタメを楽しむことができる今に感謝し、幸せを感じるのだ。そんな当たり前のようにあるエンタメ界を衰退させるのが、もしSNSだとしたら、SNSなんて無くなっていいのではないか。もともと無くても普通に楽しく生きてこられたのだから…。発言が自由だとしても、人を傷つける自由など無い。傷つけられる筋合いもない。

 だから、エンタメを楽しんでいる人は少なくともどんなニュースもポジティブに受け入れようではないですか。俳優さんたちやアーティストさんたちは、私たちの職業とはちょっと違って、自分自身が商材なのです。だからこそ、もっと大切に寛容に、楽しませてもらうことに徹底しましょうよ、、、というのが、私の主張である。

 エンタメをもっと大事にしていこうではないですか!!

 

 ドラマを観れば、何十通りの何百通りのいろいろな人生を疑似体験できる。殺人犯にもなれるし、モテモテのイケメンにもなれるし、凄腕の外科医にも、敏腕弁護士にも、、、この映画のような精神科に入院する患者にも、看護士にもなれる。

 ケチをつき、愚痴を吐くんじゃなくて、大変な中で生きているという人があり、大変な人生を絶望の中でも歩もうとしている人がいることを、映画を観て味わおうではないですか。

 

 ということで、ぜひ『閉鎖病棟 - それぞれの朝 -』おすすめですよ。ちなみに、実際に精神科病院での勤務経験のある姪っ子と観に行ったのだが、「部分的にはあり得ない、でも、実際に経験したことも多々リンクする」そうだ。またしても綾野剛くん、ピカッと光る演技でやってくれます。

 

 

★みじん子レーダー【映画】閉鎖病棟 -それぞれの朝-

●ドラマティック度:★★★☆☆

●鑑賞後の心地良さ:★★★☆☆

●ドラマの重量感:★★★★★

●涙活度:★☆☆☆☆

★リアルに近づけた精神科病棟が舞台となって貴重な経験ができる重ーい117分