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【ドラマ・映画】令和時代の絶滅危惧種のレッドリストを見よ! ‐宮本から君へ‐

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好戦的不器用さは絶滅危惧種?!

 2018年4月期のテレ東「ドラマ25」で放映されたときは、うっかり見逃していた。2019年7月期の深夜再放送枠で「おぉっ、池松壮亮くん主演のドラマだ!」と飛びついたのが『宮本から君へ』だった。

 

 まずははじめに思ったこと。主人公の宮本浩を見て、

「こんな奴、いまどきいるだろうか?!」

 ・・・で、コミックがいつ出たのかを調べたら、講談社『モーニング』誌上に1990年35号から1994年34号にかけて掲載されたとのこと。な~るほど。ちょうどバブル期絶頂を過ぎて崩壊直後のころに描かれた物語、、、と言うことを知って納得した。ドラマ化しても映画化しても、この物語が原作に忠実であれば、宮本と私はほぼ同期の人間である。

  主人公の宮本浩はとにもかくにも不器用である。女性に対しても、仕事でも、、、「なんでそーなるの?!」と言いたくなる哀しいくらいの不器用な男だ。

 己の正義感や意地で信念を突き通そうというのは、ずる賢い人間の多い世の中には稀有な存在だが、度が過ぎると「タダのアホ」に成り下がる。・・・その加減がものすごく難しいことは分かる。。。でもね、、、ここまでの意地っ張りは自分で自分の首を絞めるだけなんだ。何のトクもない。でも、こうするしかない。できない人間が、あの時代(1990年ごろ)はけっこういたのだ。

 

 ・・・と、余裕をこいて言っている自分が、どんだけ大人なのかと尋ねられたら返す言葉などない。だって私はどちらかといえば、若かりし頃(自分の中に在る宮本浩に大いに振り回された)人間なのだから。

 自分が正しいと思うことにできるだけ忠実でありたいと思い割を食ったことは数えきれず、自分の中の正義感と世の中で生き残るためのずる賢さの間で心身をすり減らし、健康を損なったことは今となれば「愛しくて可愛いあの頃」だと微笑ましく思えるが、当時の自分はたまったもんじゃない。そんな自分本位の葛藤にエネルギーの殆どを費やしていたのだ。「不器用」と一言で片づけるには本人にとってあまりにも辛すぎる。

 

 理想より現実、本音より建て前、長いものには巻かれろ、我田引水・・・。社会人になると、自分がそれまで築いてきた信念や価値観では、なかなか生きられないことを思い知らされることに遭うものだ。人によって傷つけられ、貶められ、陥れられ、どんどん心が汚(けが)れてすり減っていく。それでも生き残ろうともがいた結果、自分が「なるまい」と思っていた側の人間に近づいていく場合もあるだろう。でも、宮本はめげない。徹底的に自分の中の正義を信じて戦う。なぜ、泥沼にハメらえても腐らずに暑苦しいまでに前向きに生きようとすることができるのか?その気力を維持するのは、やっぱり「人」なのではなかろうか。『宮本から君へ』に登場する、小田課長や神保、田島、そして、ドラマではちょこっとしか登場しないが、映画ではメインで登場する靖子の存在なのではないか。(現時点で、まだ映画は観てないけど)

 

 「アホ!」とイコール関係の不器用さで突き抜ける宮本を池松壮亮くんが演じるのがすごくいい。聞けば、役作りのために本気で前歯を抜こうとしたらしい。深夜の連ドラだったにもかかわらず、キャストは豪華。神保は松山ケンイチさんだし、靖子は蒼井優さん、小田課長のほっしゃん(星田英利さん)も、彼らと対抗する益戸の浅香航大さんも、キャラにドンピシャリだ。

 

 ひるがえって今の時代に、宮本浩のような若者など私の周りでは見たことが無い。自分の若かりし頃は希少ではあっただろうが、宮本っぽい人間はいた。今、宮本っぽい人を知っていたら紹介してもらいたいほど、世の中は、穏やかになったというかおとなしくなったというか、、、。だからといって、不器用の対義語である器用な人が増えたのか?といえば、そうでもなさそうだけれど。

 

 そんな今の時代だからこそ、宮本浩は映画化される。こんな人間もいる(いた)んだというのを見る社会科見学として、映画まで観ることをおススメしたい。

 

 社会に対して器用に生きるか不器用に生きるか、そんなこと、きっとだれもが考えて生きているわけじゃないけれど、貧乏くじを引く人間というのはいつの世にも居て、周りから「アホ!言われても、でけへんねん!」のである。

 

 

みじん子レーダー【ドラマ】宮本から君へ

●悲しくて切ない不器用すぎる男の物語

●宮本のような男を好きになる女性は幸か不幸かを考えて欲しい

池松壮亮くんの演技力に惹きつけられる