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【映画】ステップ:愛と優しさで涙活できる今オススメの作品

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家族は変化し続けるもの、だから、急がず慌てず一歩ずつ…

山田孝之さんといえば『白夜行』が印象的だったけど、私はアーティスティックで前衛的な作品に好んで出演される俳優さんだと思っていた。(たぶん『全裸監督』のインパクトが大きいのかもしれない)。

entame-i-ga-tomaranai.hatenablog.com

ところが、たまたまインタビュー記事を読んだのだが、彼は「愛とワクワク」をとっても大事にしているということが書かれてあった。そして「あぁ、なーるほど~!」と頷けたのがこの作品、映画『ステップ』

突然、父子家庭となった親子の10年

現在公開中なので、あらすじは↓↓↓からどーぞ。

step-movie.jp

妻の突然死によってある日いきなり父子家庭となった父、武田健一(山田孝之)と一人娘の美紀(一瞬しか登場しない赤ちゃんから中学生まで計4名で演じ分けていた)。

敏腕営業マンだった健一はフレックスタイムを利用できる総務部へ移動させてもらい、まだ2歳の美紀を保育園に預けながら父と娘の新たな生活をスタートさせるところから物語は始まる。

フレックスタイムといっても、仕事と家事育児の両立は大変だ。なんだかんだいっても日本の会社は男性社会だし、そんな中で男性が業務をコントロールするのは相当大変だ。たまたま周囲に理解ある同僚がいたので、残業を引き受けてもらってもらったりしながら、毎日、時間に追われて日々が過ぎていく。

ん~なんだか、このあたりがよくわかる。『仕事と家庭の両立』とはカッコイイキャッチフレーズだけれど、実際これがどれだけ難しいか、無理を言っていることなのかは経験した者でないと解らない。お給料をもらうから仕事はおざなりにできない。かといって、大事な子育てだっていい加減にできない。・・・つまり、どちらも納得がいくようにこなすということは不可能だ、、、と私は言いたい。

それでも、この武田家のようにどうしようもない理由で、仕事と家事、子育てをすべてこなさなくてはならない人はこの世の中にたくさんいるだろう。その苦悩も描かれているのでこうした人たちへのエールのようでもある。

 

父は『子育て』を優先した

健一は、美紀が小学校中学年くらいになるまでははっきりと子育て優先の生活をしていた。元上司から何度も、営業に戻らないかという引き合いをもらっても断り続け、美紀を育てる環境を最優先した。

子供の手が離れはじめる頃にやっと営業部に戻り、本来のキャリアを発揮していく。…そこで、新しいパートナーに出会うことになるのだが…。

気づけば美紀は難しい年ごろに突入し、どんどん扱いづらくなる。「パパーッ!」と手を広げて走ってくる姿はもうない。生意気な口を叩くようになるし、しっかりするし、、、それでいて危ういところもあり、、、男親の限界を感じるようにもなる。

 

そうして、約10年間、健一と美紀、そして写真立てからずーっと家で見守ってきた妻は、懸命に家族として成長し続けてきたのだった。

家族は形を変えながら、成長する…Step by Step のステップ。

健一を見守る義理の両親(國村隼余貴美子)、そして、やがて美紀の母となる斎藤奈々恵(広末涼子)...Step Parents のステップ。健一&美紀親子の姿と共に彼らの関わりも少しずつ変化していく…ところに見応えがあります。

映画のタイトル『ステップ』にはいろんな意味が込められている。

 

全員優しい、どれもあたたかい…そんな世界に浸ってみては?

人の絆をあたたかく描くのが上手な重松作品、さすが!だなぁ。どの作品も泣けちゃうんだけど、『ステップ』はとにかく登場する人たちが優しい、あたたかい。みーんな美紀ちゃんのことを思い、健一さんの頑張りを応援している。・・・とはいえ、それは、奉仕的だったりおせっかい的な優しさじゃない。彼らの懸命に生きていく姿を見守って応援しているって感じ。そこが観ていて清々しい。

こういう世の中だからこそ、おもいっきり優しさ溢れる世界に浸って涙を流し、心を清めてはどうでしょう?私はスッキリ!元気になりましたよ。

 

 

親が子供を愛する…最もシンプルで強いエネルギー

突然、慣れない家事育児を背負わされた健一が、上手にこなせたわけはない。それでも、美紀がある程度成長するまで、健一の中で子育てが一番と決めていたことが、映画からも伝わってくる。実は、私はこれにすごく共感した。

私は『仕事と子育ての両立』というキャッチフレーズに違和感を持っているからだ。我が子は自分にとって、自分は我が子にとって唯一無二の存在だ。仕事は替えが効く。途中でやめることだってできる。でも、子どもにとって親である自分には替えが効かない。子育ては辞められない。

そりゃもちろん、子育てで仕事のブランクを強いられることはこれまで積み上げてきた努力を思えば口惜しいところもあるだろう。…でも、仕事はしょせん『替えが効く』のだ。代わりにやる人がいくらでもいるのだ。私はそう思って我が子の年齢が「~つ」と「つ」の付く年齢になるまでは完全に子育て優先を決めて仕事をしてきた。だって大事なことをひとつ決めてしまうと両立に対するストレスはないんですよ。そりゃ時間のやりくりなどで大変な時もあるけれど、何が大事かということがハッキリしているからどうすりゃいいのかだけ決めりゃいい。私はこれがあったのでどんな繁忙期があっても精神的にはラクに過ごせた。だから、健一の覚悟に激しく同意。たぶん、健一は仕事があるのに…のモヤモヤで子育てを疎ましく思ったことはないだろう。時間のやりくりはとても大変そうだったが健一の子育てに悲壮感のカケラも見えなかったのはこうした理由からだと思う。

 

子どもは成長とともに、親の苦労はそっちのけでどんどんどんどん生意気になっていく。でもそれが成長。最後は、親の私を踏み台にして自分の世界へ行ってくれ!です(笑)。そういう意味のステップもアリかな…。

 

「愛」を大事にする山田孝之さんに真似るなら、「愛をたっぷり注いで、パッと身を引く」親になりたいと心から思ったわけです。

なかなか難しいけれどね。

だから、「ゆっくり育ってくれよ」(劇中のセリフ)が身に染みるんです。

 

★みじん子レーダー【映画】ステップ
●ドラマティック度:★★☆☆☆
●鑑賞後の心地良さ:★★★★★
●ドラマの重量感:★★★☆☆
★素敵な家族の姿をとことん見せつけてもらえる心あたたまる118分