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【映画・ドラマ】『みなさん、さようなら』&『限界団地』-団地を舞台にした2作品に時代の移り変わりとコミュニティの変化を見る

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時代は意外にサッサとアッサリ変わるんですね…

『団地』…かつては憧れの響きだった

【常識】(common sense)普通、一般人が持ち、また、持っているべき知識。専門的知識でない一般的知識とともに、理解力・判断力・思慮分別などを含む。-引用:広辞苑無料検索より-

…ここのところ私は「常識とは一体何なんだ?」と考えている。

会話の中で出てくる『常識』は、「ま、持っていて当たり前の知識・考えのことだから、それ(常識)がない人は社会人として大丈夫?」っていうような意味合いで使っている気がするんだけど、なんだかここのところ自分が『常識』だと思っていたことはすべて単なる固定観念であって社会に通用するものじゃあないし、そもそも自分が『常識』だと思っていることこそ流動的で時代によって社会によってコロコロと変わるもので、そこにこだわる必要なんてないんじゃないか、とさえ思っている。

さーて、ちょっと前(いや、だいぶ前)の話になるが、子供時代の私は『団地』と聞くと、私はすぐさま『ママレード』と『紅茶』を思い浮かべたものだ。ちょっと時代の先を行っていた、洋風でハイソで…そんなイメージ。

私は首都圏と言われた場所ではあるけれどいわゆる田舎育ちの人間だ。駅から少し離れたところにある一軒家で暮らしていて、周りは田園で囲まれていて、近所の友達とさんざん外を駆け回り遊びまくった。

…小学校に入学すると交際範囲がご近所を超えて通学学区内全域に広がった。そこで仲良くなった友達が「~団地」に住んでいると聞いて、初めて『団地』という言葉を知った。

でも、その団地は区画整理された土地に建てられた一戸建ての集合体、いわゆるベットタウンだった。初めて、その団地で暮らす友達の家に誘われて遊びに行ったとき、フリルのついたエプロンをつけたお母さんが、ミカンのはちみつ漬けのようなものが入った紅茶を入れてくれたのをいただいて衝撃を受けた。

「お…美味しい!」

「あら、みじん子ちゃん、ママレードが好きなのね」友達のお母さんがそう言って初めて、これはミカンのはちみつ漬けではなくママレードというハイカラな食品だということを知った。

家に帰宅し、その話を興奮して母親に話したことを覚えている。

負けん気の強い母親は「ママレードなんていつでも食べさせてあげるわよ!」

以来、団地で暮らす人のイメージがママレードと紅茶になったのだ。

数年後、その団地へ引っ越すとは想像もしなかったころの話、である。

 

さて、それくらい『団地』というネーミングには独特の世界を纏う。母親の友人一家が暮らしていたいわゆる集合住宅の団地は、子どもの私にとっては不思議ワールドであった。極めて人工的でどこを見まわしても同じような景色。昔は在宅時に鍵を閉めることが少なかったので、鬼ごっこをするとなぜかよその家に逃げ込んでしまったり…。そういう迷宮のような空気を団地に感じていた。

不思議ワールド、団地は高度成長期のシンボルだった。

同時に『団地妻』というネーミングもあったりして『団地』で暮らす人は前衛的でかつ妖艶的なイメージがあった。例えば、休日でも朝起きたらルーティンはすぐメイクをして夫にもスッピンを見せない女性…みたいな。…はい、確実な誤解ですm(__)m

 

…ということで、前置きが長くなったが、『団地』を舞台にした2作品を紹介しよう。

 

コメディのような空気が流れるも徹底的に切ない映画『みなさん、さようなら』

まずは映画『みなさん、さようなら』2013年に公開された作品。

主演は濱田岳さん。まだ、そんなに注目されていない波留さんや田中圭さんも登場するなかなか豪華なキャスティングである。

1981年団地内にある芙六(ふろく)小学校を卒業した107名の生徒。同級生はみな同じ団地の住人だ。主人公の悟(濱田岳)は団地の敷地を出たところにある中学校へは「わざわざ行く必要がない」と断言し、自宅で自分の決めたスケジュールに沿って生活をする。早朝に起きてベランダで乾布摩擦、ラジオ講座や読書で勉強をし、ジョギングや敷地内の公園で筋トレも欠かさない。夜は決まってパトロール。同級生たちが暮らす家の明かりで無事を確認。

悟は団地から一歩も出ることがない。中学を卒業したら団地内にあるケーキ屋で働きはじめる。彼のルーティンは永遠に続くと思われたのだが…。

時代とともに107人の卒業生は引っ越ししていく。一人減り、二人減り…。

それでも、彼は変わらず団地内で暮らし続ける。隣で暮らす同級生の松島有里(波留)は、友人たちからは少し距離を置かれている優等生だが悟とは幼馴染ということもあってベランダの隔て板越しでたわいもない会話をする。有里はいずれここを出たいと考えていて、団地という狭い世界から大海原へ飛び出しても引け目を感じることがないよう大人への階段は着実に悟をほどほど利用しながら登り、やがて団地を去っていった。

悟がずっと心を寄せていた緒方早紀(倉科カナ)は団地内の保育園で働いている保育士だ。小学校の同窓会(悟のことを考えて団地の集会所で開催)で再会し、ふたりは付き合うことに。悟の良き理解者であったのだが、本心は一緒に団地から出ていきたいのだった。

…とまあ、ほかにも悟と同様、団地内で長く暮らしながらも心を病む薗田憲明(永山絢斗)や、友人がみな団地の外へ引っ越し、代わりに入居が増えた外国人居住者のひとりである不登校の中学生マリアの存在、マリアに日常的に暴力をふるっている義父でクズ男の堀田(田中圭)など、いろんな訳アリ人物が登場して面白い。

映画のタイトルは小学校で1日の終業の名文句「せんせい、さようなら!みなさん、さようなら」から取っている。なかなか洒落ている。

実は、そもそも悟が団地を出られないのには大きな理由があった。結局、悟も団地から出ることになるのだが…いきさつはぜひ観てくだされ~。

 

佐野史郎の怪演で恐怖の限界!『限界団地

…ということで『団地』気分をたっぷり味わったら思い出しちゃった、強烈なホラードラマ『限界団地

2018年6月~放送された深夜ドラマ、なのだが、真夜中に「ヒャーッ!ヒェ~ッ!」と思わず声を上げながら観ていたことを思い出した。途中で「なんで、こんな怖いドラマ観始めちゃったんだろ…」と後悔しながら、どうしても次が気になってついつい最終回まで目が離せなくなった作品だ。

あらずじ等は番組のサイトがあるのでそちらで参照を~!

www.tokai-tv.com

物語の舞台となるあやめ団地を愛するあまり、強烈なまでに住民たちに介入していくおじいちゃん寺内誠司(佐野史郎)。舞台は平成。かつて憧れのニュータウンだといわれた集合住宅の『団地』に、先に紹介した『みなさん、さようなら』で悟(濱田岳)が親しんだ団地コミュニティのような関係を復活させようと奔走するおじいちゃんが、理想の団地を目指して自らをあやめ団地のヒーロー「ダンチマン」と名乗り、理想を邪魔する者たちを排除する…。その手口、そして、彼の信念、そこに至る背景…。ゾッと鳥肌を立てずにはいられない。

ずいぶん夏らしい陽気になって「暑いけどクーラーはまだいいかな…」と思っている人にこの『限界団地』で涼を取るのをオススメします!

 

ということで話を最初に戻します。

かつてどんどん建てられた『団地』は老朽化が進み、建て替えたところもあるものの、高度成長期に入居した人たちは高齢化し、一部、ゴーストタウン化したところもあるいわゆる「今は昔、」のようなところになっている。

私が子どもの頃に憧れた、フリフリのついたエプロンとカタカナ語ばかりを使った食材や料理、そこに住むお母さんたちはいつも綺麗…。そんな印象は今はどこにもない。

高度成長期に各地で団地がどんどん建てられ、憧れの住まいとして提供されたころの常識は「団地こそ時代の最先端」だったかもしれない。

変わるんですねぇ…何事も。諸行無常です。

 

そして、21世に入って時代の変化はどんどん加速して、この1年間だけを捉えても恐ろしいくらい人々の価値観や社会の常識がコロリと変わっている。

お役人が口癖のようにいう「通例」とか「従来」とかいう言葉はもう死語になるのではないだろうか。

時代の流れに乗るまではいかなくても、時代の変化を受容できるくらいにはなっておきたいと思って、自分の『常識』について疑問を持った…というのが、冒頭の背景です。