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【映画】スキャンダル:実話をもとに"セクハラ”を扱った物語

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権力で束ねられた社会であるかぎりハラスメント問題は終わらない…

興行モノが沈まりゆく恐怖と悲しみ

突然、長期の春休みに突入したウチのJKと退屈しのぎに某シネコンへ。観たい作品が違うのでロビー解散&ロビー集合ということで私は会場のドンつきにあるスクリーンへ…

すると、なんと、広~い会場が「私だけ!?」

エンタメのイベント自粛(楽しみにしていた舞台がまた中止!涙)が当たり前になってきて、映画館もそのあおりをモロに受けていることを実感。人がいない!

エンタメを心の栄養にしている私にとっては非常に厳しい状況が続いている。

広いスクリーンを前にひとりで現在公開中のハリウッド映画を観ることになるとは…。いつかつくりたいと夢見ているマイシアターが疑似体験できてワクワクしたけれど、やはり寂しい。エンタメは盛り上がっている中で楽しみたいものだ。(後からご婦人2名が入ってきて計3人になった...)

実話をもとに作られた挑戦的な作品

私が観たのは、先日開催された第92回アカデミー賞で、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したカズ・ヒロさんで注目を浴びた映画『スキャンダル』

 

gaga.ne.jp

 

2016年、米国ケーブル局最大手のFOX CEOのロジャー・エイルズがセクシャルハラスメント(以後 セクハラ)で訴えられるというセンセーショナルなニュース(実話)を元に描かれた作品だ。

www.afpbb.com

2017年にはハリウッドの大物映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタイン氏によるセクハラ行為をハリウッド女優たちが告発したのも記憶に新しい。なんと、ワインスタイン氏は禁錮23年の実刑を言い渡された(こういう極端な大どんでん返しはいかにもアメリカらしい)。

www.cnn.co.jp

今まで当たり前のようにあったけれどそこに声を上げる人がほとんどなかったセクハラに対して世の中の「NO!」だと声を大にして言えるようになったのはここ数年のこと。だいぶ世の中でもセクハラ問題が取り上げられるようになったけど、実際はとてもデリケートなもので個人が取り扱うには勇気が要る。

映画『スキャンダル』で描かれた事件は、米国内だけではなく日本でも注目を集めた。エンタメ業界にとどまらず女性の社会進出とともにセクハラ(パワハラも)が表沙汰にできるようになったからこそ厄介で複雑なものになっているように感じる。

 

仕事。地位と名誉と、セクハラと。

映画『スキャンダル』は同一人物による3人の女性のセクハラ問題が中心に描かれているのだが、彼女たちが共に手を取り合って問題と戦ったわけではない。それぞれがそれぞれの立場でセクハラと向き合った。この業界は同性でさえ敵みたいなものだし、それぞれの『守りたいもの』が違うから当然だ。セクハラは明らかに×な行為だけど、抵抗や告発となると一気にハードルが上がる。それは個人的な事情が大きく関わるものだから。

ざっと3人の女性を紹介しよう。

 

FOXの有名なニュースキャスターであるグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)はスタンフォード大学を優秀な成績で卒業したジャーナリストで、ミス・アメリカに輝いたこともある才色兼備な人物である。女性蔑視の社風の中で彼女は番組で挑戦的なテーマを取り扱うことが多く、そのためにプライムニュース番組から降板させられ、昼番組へ移動したのだが、彼女のオピニオンはFOXの方針と合わず、結果、降板&クビになったのを機に、CEOのロジャーを訴えた。降板の本当の理由は、ロジャーから性的関係を迫られ拒絶したことによるものだった。

 

ジャーナリストそして元弁護士でもあるメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は自身の名を用いたニュース番組を持つほどの人気あるキャスターである。トランプ大統領選の討論番組で挑戦的な質問攻撃をしたためにトランプ本人から約一年にわたりツイッターで執拗な攻撃を受ける。世間のトランプ支持は拡大し、FOXにメーガンに対する誹謗中傷、抗議がたくさん届くように。メーガンは身の危険を感じ、ロジャーに「会社として守って欲しい」と頼むのだが、ロジャーは冷たく「視聴者は対立を好むもの」と言うだけだった。

 

3人の女性の中で、彼女だけはフィクションである。グレッチェンやメーガンとは大きく異なる部分がある。それは、自分の出世のためにセクハラに甘んじてしまったという苦い境遇である。グレッチェンやメーガンのようなキャリアを持つ女性たちの中で生き抜かねばならない厳しさと、年齢と経験の差(若手である)、保守的な社風、そしてLGBT当事者であるという複雑な問題を抱えている。グレッチェンやメーガンのようなキャリアと地位を手に入れるために、身体を張って表さねばならないロジャーへの忠誠心とセクハラ被害という屈辱の間で苦しむのだ。

 

あらすじについてはぜひ映画を観て欲しいと思う。

 

男女平等という言葉は"不平等”だからある言葉

この世から“無くならない”ものは、在り方、関わり方を考えるしかない。

セクシャリティ、権力、金。これは絶対に無くならない。

アメリカも日本も、なんだかんだいってコッテコテの男性社会だ。そんな国で権力を握っているのはやはり今だって男性である。権力を持つ者が自分たちの優位性を放棄するはずなど無い。こんなに文明が進んだって、セクハラ問題が大きく取沙汰されてしまうということが何を意味するのか…。

 

男性から女性は「オンナ」として見られてしまうことは避けられない。逆も然りだけど。そして、権力の強い者が支配力を持つ。

男性主導の社会で女性が世の中に出ようとすればするほど、とりまく男性たちの「オンナを視る目」に屈することなく、しかも、派手に抗うことなく(したたかに)生き抜かねばならないのだ。

実際には「オンナ」であることを利用する人もいるし、その「オンナ」が武器になることだってあることは否めない。ただし、社会において自分が「オンナ」であることに殺されては、結局、同胞である女性の地位を下げてしまう。でも、何を大事に生きていくのかは個人の価値観によるものしかない。…難しい。

そう思うと、セクハラは一義的な基準を設けることは至難である。けれど、あらゆる差別からの解放は目指されるべきで、それは平和の証拠でもあるんじゃないかと最近は特に思う。

 

世の中の変化が大きく、今まで是だったものが簡単に非にひっくり返ってしまうということを、今、実際に体験している。

もし、有事が起きたら国力のイニシアティブは男性に大きく傾くだろう。なんだかんだいっても、人権などの議論は平和な社会だからこそ取り組めるテーマであって、有事が起きればすべてがひっくり返るものだと思うから。

劇中に登場した「フェミニスト」という言葉が、冷笑&馬鹿にする意味で使われていることに引っかかった。しょせんアメリカも、、、その程度だし、常に戦争を起こしている国だということがこういうところでハッキリ解る。トランプが支持されてしまっている時点で、そういう国なんだろう。

未来はだれもが互いに理解し合い、手を取り合い、認め合いながら生きていけるように、権力の在り方こそ見直す必要があるけれど、アメリカも…そしてアメリカ大統領と仲良しをアピールする日本の総理大臣も、権力の一極集中を目指しているようでならない。

 

 

 

いろんな意味で難しい・・・ということを、この映画で感じた。

が、彼女たちのとった行動は、ものすごく勇気の要ることだっただろうし社会への問題提起として大きな一歩であることは確かだ。

 

男女平等と言ったって、そもそも「違い」があるものを等しくしようとする考えが、今の社会の在り方ではより難しくなっていて、私たちの生きづらさを生んでいるんじゃないかとも思える。

セクシャリティを売り物にしている商売だってあるし、そこを否定したらエンタメだって衰退しちゃう。

ヌード写真集は出すけれど、みんなに裸を見せるからと、枕営業を求めるのはセクハラに相当する。一方で、実力を平等にジャッジしようとする中で、オンナを武器にする人だっているわけで、そういう誘いにまんまと乗る人もいる。大なり小なりセクシャリティが人の魅力のひとつだし、それを扱う仕事であればあるほど、線引きは難しい。

 

だから、映画『スキャンダル』は観る人によって感じ方も味わい方も違ってくるんじゃないかと思う。

 

★みじん子レーダー【映画】スキャンダル
●ドラマティック度:★★★☆☆
●鑑賞後の心地良さ:★★☆☆☆
●ドラマの重量感:★★★★☆
★理性とモラル、社会と権力、複雑な思いで観る109分