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【映画】本は人間の営みを豊かに彩る-ガーンジー島の読書会の秘密-

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本はエンタメの真髄。永遠に不滅です!

 日本では活字離れが深刻化している。街の書店が次々に閉店し、フラリと書店を覗いて相性の合う本に出合うような機会もグンと減った。まったく由々しきことだ。

 本によって人生の困難を支えられ、本によって失恋の痛手を慰められ、本によって若さゆえの孤独との闘いを応援してもらった私にとって、出版業界の低迷をいろいろな場面で憂いている。なんといっても出版業界がイキイキしてくれなくちゃ、私の食い扶持も危ぶまれるのだ。これは大いなる危機である。過去に某県知事となった芸能人の選挙演説の決まり文句をお借りさせてほしい。

 出版業界を、活字離れを、どけんかせんといかん!!

 

  ・・・ということで、体型に合うサイズが無いという負け惜しみなど関係なく、ブランドモノよりも本にお金をかけたいと思う私にとって、(本)や(読書)をテーマにした映画は本の持つ力を感じてもらうためにも、より多くの若者に見て欲しいと願うばかりだ。

 そのひとつ、2019年3月に日本で公開された『マイ・ブックショップ』は素敵な映画だったので、いつか記事を書きたいと思うが、この映画の舞台となったイギリスの海辺の町や、本がつむぐ人との絆が非常にリンクしている作品『ガーンジー島の読書会の秘密』を今回は紹介したい。

 

 舞台はイギリス海峡にある小さな島。すぐ近くにフランスの港町シェルブールがあり、どうやら太古の昔はフランス本土と陸続きだったらしい。そんな場所である。この島は第二次大戦中ナチス・ドイツに占領されていて島民は苦難の道を強いられた。映画は、終戦を迎えた英国のロンドンから始まる。

  主人公のジュリエットを演じたのは実写版『シンデレラ』で鮮やかなブルーのドレスを身に纏い、美の極みを見せつけてくれたリリー・ジェームス。

 女流作家のジュリエットは、終戦の喜びにわくロンドンの書店で自著のサイン会に励みつつも、新作の創作意欲へ気持ちが向かわず、恋人マークとの時間でその気持ちを紛らわせていた。

 そんなジュリエットに届いた一通の手紙。ガーンジー島で暮らすドーシー・アダムスなる人物からだった。彼が持っている古本に、ジュリエットがかつて暮らした住所と名前が書かれていたためだ。手紙には、ジュリエットの名が記載されていた本に関する質問だけでなく、彼がガーンジー島の読書とポテトピールパイ同好会の一員であることが記されていた。ちょうど読書の魅力についての寄稿を依頼されていたジュリエットは、この同好会の活動に魅力を感じ、単身、ガーンジー島へ出向く。そこで、ジュリエットはこの同好会が抱える深い闇をまとった秘密に出合うことになる。

 

・・・ネタバレにしたくないので、ストーリーはここまで。この映画のジャンルはミステリーに属するようだけど、私としてはヒューマンドラマであると言いたい。ナチス・ドイツの占領下にあり自由を奪われた島民たちを救ったのは本を介するコミュニティーである。メンバーは互いに興味を持つ本を紹介し合い、本について語り合う。戦時中、島民は家畜を奪われ、酷い食糧難にあえいでいた。そこで、彼らはポテトピールパイ(じゃがいもの皮のパイ)をご馳走に、ささやかな読書パーティーを楽しんでいたのだ。

 

 本はストーリーの魅力だけでなく、読者そのものの人間性を映し出すものでもあると思う。イチオシの本はもちろん、同じ本だとしてもグッとくるシーンはひとり一人違うし感じ方も違う。だからこそ、人間の営みそのものを豊かにするものが読書だと熱弁をふるいたい。

 本をテーマにした作品と言えば、2003年に日本で出されて、大ベストセラーになった『朗読者』。邦題『愛を読む人』というタイトルで2008年に映画化されたが、この本を読んで大号泣したことを思い出した。本は人と人を、心と心を繋ぐのだ。

 

 私はよく図書館で借りたり古本屋で本を買うことがある。主に新刊でないものや蔵書にするつもりがないものだ。仕事で本の下読みが必要なことも多いので、いちいち購入はできない。ほかに絶版になっているものや純文学に属するもの、買うまでもないのだけれど一度目を通したいものはできるだけ金をかけず入手している。我が家の書棚の事情も大きく関係している。

 誰かが前に読んだことのある本を手にすると、ときどき、見えない読者がたどった道を見ることができる。重要だと思われる部分にラインを引いていたり、ちょっとしたメモ書きだったり、たまーにだけれど栞が挟んであることもある。そんな、見えない読者の(本の読み進み方)に触れるだけで、自分とは違った感性に触れることができるし、

本は生きている

のだと実感するのだ。

 

 どこでどう縁が結ばれるか分からない。人生を大きく変える縁に出会うことがある。手に取って紙やインクの匂いをかぎながらペラペラとページをめくり、並んだ文字から広がる想像の世界に浸ることができる、、、それが本。

 まさに、本はエンタテイメントの原点であり真髄でありロマンである。

 『ガーンジー島の読書会の秘密』は、なかでもロマンティックな世界に魅了される。ガーンジー島の自然の美しさも然り、当時の街並み、島民の地味でありながら気品を残したイギリス流の装い、ジュリエットとドーシーの本が結んだ愛情、、、ロマンチックが止まらない!のである。

 

 良質な洋画を観ると淀川さん調で「映画ってホントにいいもんですね」と、しみじみ言いたくなる。が、TOMOさんのおかげでコッテコテの邦画、しかもアイドル映画も大好きになった。次は『かぐや様は告らせたい』を観たいと思っているが、このように、ジャンルやキャストの幅を超えて、心からエンタメを楽しめるようになった私の人生のふり幅も原点は本にあると言いたい。

 ジャニーさんの言葉、Show must go on!になぞらえて、私は、Reading must go on!と言わせてもらおう。

 

★みじん子レーダー【映画】ガーンジー島の読書会の秘密

●ドラマティック度:★★★☆☆

●鑑賞後の心地良さ:★★★★☆

●ドラマの重量感:★★★☆☆

★島の自然の風景が美しさが主人公の心を溶かしていく優しさを感じられるミステリー124分