【ドラマ】怪獣倶楽部:同人で青春したい~!!
第一次怪獣ブームが熱い!
『怪獣倶楽部~空想特撮青春記~』は、2017年6月に毎日放送制作の深夜ドラマ枠ドラマイムズで放送された全4話の連ドラ。
今、U-NEXTで観ることができる。ぜひおススメしたい作品だ。全4回というのはとても短い。なんならこれでウルトラシリーズを回顧したいくらいだ。
今でいう同人誌のハシリ『怪獣倶楽部』
ドラマの舞台は1970年代。第一次怪獣ブームに熱狂した青年たちが怪獣や宇宙人への溢れる愛を語り合う同人誌サークル『怪獣倶楽部』。編集長であるキャップ(塚地武雅)率いる計7名が『喫茶ツネ』で開かれる編集会議の喧々諤々がとにかく面白い。
編集長以下のメンバーは、怪獣倶楽部のナンバー2で熱血漢のジョー(柄本時生)、誰よりも勉強家で理論的なシンゴ(矢野聖人)、熱くなりすぎる編集部の中で常に冷静さをもつまとめ役のシン(山口翔悟)、怪獣スケッチ担当のユウスケ(加藤諒)、最年少の高校生メンバーのカツオ(横浜流星)、そして、怪獣倶楽部のエースでドラマの主人公のリョウタ(本郷奏多)。とにもかくにも濃ゆ~いメンバーで、最高の同人誌を作るべくそれぞれの得意分野で各ミッションを遂行する。
ヲタ活は恋愛と両立できる?!
実は、主人公のリョウタには同じ大学の学生で彼女のユリコ(馬場ふみか)がいるのだが、怪獣倶楽部の活動が忙しくてなかなかユリコの気持ちに応えることができない。デートでは約束の時間に遅れたり、すっぽかしたり…。肝心な時にかぎっていつも編集会議とバッティングしてしまうのだ。ユリコはだんだんご機嫌ナナメになるのだが、どうしても、忙しい理由が怪獣倶楽部であるということを言えないでいる。「引かれやしないか?」「嫌われるのではないか?」。そのモジモジッぷりが本郷奏多くんにピッタリだ。
今や大人気の横浜流星くんのキレのあるヲタっぷりも見どころ。
ドラマは毎回、同人誌『怪獣倶楽部』の発行に合わせて展開され、第1話(創刊号)から第4話(最終号)の全4話。それぞれの回で、ウルトラシリーズの名作回と怪獣が登場し、気弱なリョウタを支えるべく守護霊のように傍にいる。以下は各回に登場した守護霊怪獣(宇宙人)と同人誌のテーマである。
■第1話(創刊号):メタトロン星人
・テーマ:ウルトラマンセブンの中でも特に名作であると言われている第8話『狙われた街』
特撮の巨匠といわれている実相寺昭雄氏が監督した作品。なんといっても第8話の名場面は、主人公ダンとメタトロン星人のちゃぶ台を囲んだ談話シーンである。
メタトロン星人は「地球を壊滅させるのに暴力をふるう必要はない。人間同士の信頼感をなくせばよい。人間たちは互いに敵視し傷つけあい、やがて自滅していく…」とダンに語るのだ。
メタトロン星は黒スーツの人間男性に変身して、たばこの煙の中に地球人を発狂させて周囲の者がすべて敵に見える効果を持つ赤い結晶体を仕込み、これを吸引した人が互いに殺し合うことで人類破滅を目論んでいた。
結局、ウルトラマンセブンの頭についている宇宙ブーメランであるアイスラッガーからのエメリウム光線を受けて爆発する。
秀逸なのはラストのナレーションである。
「メトロン星人の地球侵略計画はこうして終わったのです。人間同士の信頼感を利用するとは恐るべき宇宙人です。でもご安心下さい、このお話は遠い遠い未来の物語なのです…。え、何故ですって?…我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから…」
奥深いでしょう!
■第2話(第2号):分身宇宙人 ガッツ星人
・テーマ:ウルトラマンセブン第39話・第40話『セブン暗殺計画 前篇・後編』
「セブンを倒せば人類はたちまち降伏するに違いない」と無敵の力を誇るガッツ星人によってウルトラセブンがイエス・キリストのごとく十字架に磔になり危機一髪となった回である。
結局、地球人、ウルトラ警備隊によってセブンは復活し、ウルトラセブンのハンディ・ショットによってガッツ星人の円盤は撃ち落とされる。実は、ガッツ星人の弱点は「想定外の出来事に対してパニくってしまう」ということだった。これが仇となる。
ユリコと怪獣倶楽部の間で身動きがとれないリョウタは、十字架に磔にされ身動きがとれなくなったセブンにわが身を重ね…。
ユリコとの映画デートでユウスケとばったり鉢合わせしてしまい、編集会議の時にユリコのことを「妹の友達」と弁解してしまうリョウタ。実は、『セブン暗殺計画』で、ウルトラ警備隊のフルハシ(毒蝮三太夫)が恋人らしき女性のことをごまかすために言ったセリフと同じだったのだ。
第3話(第3号):宇宙恐竜ゼットン
・テーマ:ウルトラマン最終回(第39話)『さらばウルトラマン』
ウルトラマンが怪獣ゼットンに倒されて地球を去るという衝撃的な最終回である。
編集部ではもしゾフィーがゼットンと戦っていたら勝ったか?という問いがカツオから投げかけられる。「勝てない」というジョーと「勝てたかも…」というキャップが言い争いになり…。怪獣倶楽部の存続も危うくなる?!
編集会議に顔を出さないキャップを心配していたところで、偶然、キャップの姿を見かけるリョウタ。後を追っているうちに次々と怪獣倶楽部のメンバーたちが合流して…。
河原でキャップとメンバーが話をしようとしたその時、「リョウタさーん♪」という声が。なんと、ユリコさんが!メンバーたちは「もしや、あの娘はリョウタの彼女??」と怪訝な目でリョウタを見る。そこでリョウタは、
「実は、ボク…記憶喪失かもしれない…」
ウルトラマンを倒した強敵ゼットンは科学特捜隊の岩本博士が一発だけ試作したペンシル爆弾(無重力弾)によって倒された。その時、やってきたのがゾフィー(ウルトラ兄弟の長兄)。ウルトラマンとハヤタ退院の命が分離され、ゾフィーがウルトラマンの亡骸をM78星雲へ連れて帰る。
ハヤタ隊員はあまりの衝撃で記憶喪失となるのだ。キャップがリョウタの発言を、
「最終回のハヤタ隊員のことを言っているんだな?」と。そして、
「リョウタは記憶をなくしたハヤタ隊員から読み解いてみないか?」と。
第4話(最終号):ゴース星人
・テーマ:ウルトラセブン第48話・第49話『史上最大の侵略 前編・後編』
『史上最大の侵略』は第一次怪獣ブームの集大成となったウルトラセブンの最終回である。
怪獣倶楽部の活動とユリコとの恋愛の両立に疲れきったリョウタは体調を崩し編集会議でもボンヤリと元気がなく…心配したジョーが帰りに居酒屋へ誘う。そこでジョーはリョウタに怪獣倶楽部への愛を語り、キャップがこれまでコツコツとためてきたウルトラセブンの資料を手渡すのだ。
「こんな半端な気持ちじゃいけない!」と、リョウタは意を決してユリコに「しばらく距離を置きたい」と言おうとするのだが、なかなか言い出せずに逆にユリコの家に誘われる始末。
倶楽部のメンバーと河原で資料を読んでいると、うっかり川に大事な資料を落としてしまうリョウタ。慌てて川に入って資料を取り返すも高熱を出して寝込むシンゴ。
シンゴの担当ページが埋められず、怪獣倶楽部の発刊も危ぶまれるのだが。
『史上最大の侵略』の見どころは、モロボシ・ダンがウルトラ警備隊で唯一の女性のアンヌに自らの正体を明かすという衝撃シーンである。
ダンは「僕は人間じゃない、M78星雲から来たウルトラセブンなんだ…」と。
衝撃の告白にアンヌは、「人間であろうと宇宙人であろうと、ダンはダンに変わりないじゃないわ…」と言うのだ。
リョウタもついにユリコに「僕は、怪獣が好きで、怪獣のことを研究しているんだ」と怪獣倶楽部のことを告白する。するとユリコは、「私、怪獣のことは良く分からないけれど、私はリョウタさんのことが好き」と言うのだった。
…かくして、リョウタの恋と怪獣倶楽部の両立は無事、周囲の理解と共に成り立つのである。
とにもかくにも楽しそう!幸せそう!
『怪獣倶楽部』が面白いのは、好きなものに没頭しとにかく楽しそう、幸せそうなメンバーたちを観ることである。平和です、とにかく。
それにしても奥深いウルトラシリーズ。私は世代的(?)に、タロウにどハマりしました。再放送を何度も観た。早朝に再放送した時があって、寝坊だった私はタロウのために早起きができた。篠田三郎さんが超カッコよかった~。
特撮のスゴさ。今はVFXの技術が向上してリアル感は増したけど、今観直してみると特撮はVFXにはないドラマティックな世界がある。そして、BGMもクラシック曲の名作が使われていたりして非常に質が高い。ストーリーも今ではBPOやらなんやらでNGの内容も多いからこそ、人間味深く裏テーマはまるで哲学だ。
だからこそ、同人として集う人たちを魅了するのだろう。
あぁ、いいなー!私もこういう会に参加したいな~!