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【アニメ映画】若おかみは小学生:からグリーフケアを考えてみた

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小学生に思えない、たくましくて明るい若女将!

小学生が読んでいた本の内容がこれ?!

若おかみは小学生!』が昨日(2020年5月17日)、Eテレで放送されましたねぇ。

映画「若おかみは小学生!」公式サイト

この作品の原作本である青い鳥文庫のシリーズは、ウチのJKが小学3年生の時に夢中で読んでいたので、両親を事故で亡くした主人公のおっこが祖母の営む温泉旅館を引き継ぐことにった…という程度のストーリーは聞いていた。おっこの境遇が辛いものの、子どもが本を読む様子はいたって楽しそうだったので、もっとライトな感じだと思っていた。なので、放送を観て「これって子供向け?」というような物語で実はビックリした。

 劇場アニメ版は、シリーズの骨子をコンパクトにまとめられているようだから、展開が早いのは解るのだけれど、春の湯温泉の若おかみのおっこが引き受ける問題として小学生にとって少々ハードルが高い気もする。

…が、逆に、そんな深くてややこしい問題を小学生ならではの純粋さが強みとなって、深刻にならないのかもしれない。これ、若おかみが中年女子だったら、どんなトラブルも泥沼化しそうだもん(笑)

子どもの心は純粋で強い。そして、トトロのように大人が失ってしまった何かと仲良くなるのが得意で、そうした者たちに支えられて生き抜く力は強いのだろうね。

 

劇場版は主人公おっこのグリーフケア

前の記事にいくつか作品と「グリーフケア(喪失からの回復)」の関わりについて書いたことがある。ドラマ設定として(大切な人を失う)ということはある意味定番であると言えるし、主人公がそこからどのように回復するのかという過程にさまざまなドラマが展開され、観る者は心打たれるのだ。

物語を観て、一応グリーフケアアドバイザーを学んだ経験から、この作品をおっこのグリーフケアとして捉えてみるといろいろ納得できる箇所がある。

劇場版『若おかみは小学生!』の冒頭は、主人公おっこの喪失体験である事故に遭うシーンで、そこからいきなり祖母の旅館へたどり着き、あれよあれよと若女将になってしまうのだが、そこにはおっこの悲しみは一切描かれない。

代わりに、おっこの命を救ってくれた、春の屋旅館の守り神(?)のようなウリ坊との出会いや、おっこのライバルのような存在になる花の湯温泉で一番立派な旅館秋好旅館のひとり娘、ピンふりこと真月の亡くなった姉の亡霊、美陽、おっこが納戸にあった箱を開け封印を解いた小鬼の鈴鬼(すずき)が、おっこの再出発をサポートする。

鈴鬼がややこしいお客さんを連れてくるのだが、おっこはハプニングにめげず、そのたびに、女将として成長するのだ。

 

明るくたくましいおっこだが、ふとした場面で喪失体験のフラッシュバックに襲われる。…実は、おっこの中で両親の死は全く受け入れられていなかったのだ。

悲嘆のプロセスからいえば、おっこは悲嘆を回避していただけなのだ。時折、おっこの前に現れる両親の元気な姿…そのたびに「お父さんとお母さんは生きているのね!」とおっこは安堵する。が、客で占い師でおっこの年上の友達にもなるグローリーが運転する車に乗った時、PTSDによる過呼吸発作を起こす。

つまり、物語が始まってからのおっこの天真爛漫な明るさは、両親を失ったことを認めまいとする回避行動にすぎないのだ。

…やがて、(ドラマだからねぇ…)この回避行動を刺激するお客さんが何人か登場して(鈴鬼が連れてくる設定も深い)、そのたびに、おっこは女将としての成長だけでなく、着実にグリーフケアへと向かうのだ。

 

最後に登場するお客さんが決定的になるのだけれど。

 

おっこにたびたび登場した両親の幻とは別れを告げる。その正式な儀式を持って、やっと両親の死を受け入れたのだ。さて、その儀式というのは何だと思いますか?映画を観て答えてください。(※回答は記事の最後に載せときます)

と同時におっこをサポートし続けてくれた亡霊(妖怪?)たちとの別れの時が迫る。

…まさにグリーフケアです。

 

小学生だったJKがどこまでこのシリーズを読んで思ったかは知らないけれど、大人が読んでもこれは面白いのかもしれない。

昔から児童文学は実は深い意味を持つものが多く、そして、子どもこそ思い込みの垣根がない分、ストレートに伝わったりするのかもしれない。

 

このグリーフケアは死別だけじゃなくて、自分がこえまで大切にしてきたものの喪失もほぼ同じです。

ごく当たり前の生活が失われている今の私たちの生活もちょっとしたグリーフケアが必要な人も多いのでは?

で、おっこが教えてくれた「まずは現実を受け入れる」ことから、回復はスタートする。現実を受け入れるのは怖いこと…でも、安心してください(とにかく明るい安村調)「花の湯温泉はすべてを受け入れ癒してくれます!」

 

…ということで、大人向けとして観た劇場版『若おかみは小学生!』、なかなか面白かったです。

 

 

※回答:泣くこと、です。思い切り悲しんで大泣きすることです。