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【映画】影裏:影のある役がピッタリのイケメン2名が魅力的!

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どっちがオモテ?どっちがウラ?

 

ウイルスを前になすすべなく…

 新型コロナウイルス対策で街の賑わいは縮小傾向。大規模イベントの中止にはじまり、劇場や映画館も閉館のところがチラホラでてきて、エンタメ好きな我々の行き場がどんどん閉ざされてきている悲しい状況。「人の命がかかってるんだぞっ!そんなヌルイこと言っててお前らアホかぁ~!?」と非難されてもいい。マジで凹んでるんだから。

 3月にいくつか舞台を観に行く予定があったんだけど、まずは、TOMOさんと楽しみにしていた劇団☆新感線の『偽義経冥界歌』東京公演の休演日にドンピシャリ当てはまってしまった(悲)。電話口でTOMOさんが

「どうしてくれるのよ~~~!」と涙声である。頭が真っ白に…。

「あぁ、斗真くんが~‼斗真くんが消えてしまうぅぅ…(涙」

会えるのを指折り数えて待っていたのに。。。

夢破れて原稿アリ

 仕事のモチベーションが一気にダダ下がりして、目の前にある赤字原稿は霞んでいくばかり…。納品間近で文字校正に集中しなくちゃいけないってこともあるんだけど、もう眼球がヤル気を失ってしまったのである。仕方ないから気分転換に近所のスーパーへ買い物に行こうと出かけたが、なんとあちこちの棚がガランドゥ(驚! 

「なに?!何が起きたんだぁ?」

 どうやら、物流機能も低下するので物資が足りなくなる(?)とかの噂で、スーパーで食料品や日用品の買い占めが起きているらしい…。

 幸い夕方から週イチの筋トレがあったおかげで、ひと汗流して気持ちを変えることができた。…っちゅうか、

「こんなんでいいのか、この世の中はっ!」と、なんか変なモチベーションが沸々と湧いてきた。(非常に単純な人間だ)

 インターネットの普及で、だれもがネットから情報を得るようになった。そのせいで、偏った情報に誘導されやすい。無責任な発言があっという間に盛られて世の中に広がる。

 マスクをしろ!って言ったってマスクはどこにも売っていないし、アルコール消毒が有効だと言っても除菌グッズも棚は空っぽだ。そんな状況に不安を感じて、世の中の人たちはっちでもこっちでも、なんでもかんでも「今のうちに買っておかなくちゃ!」と躍起する。

 まあね、冷え込んだ消費の促進にはいいのかもしれないけどさ、この右向け右!みたいな人の動きって何なんだろ。

 ニュース番組で流れてきたのは、ドラッグストア前にマスク販売を待つ客が取っ組み合いのケンカをする姿。

 …こういう時に人の裏側が見えるなぁ…と思った次第である。

 

誰だって「裏側」はある

 前置きが長くなったが、先日、映画『影裏』を観た。人は誰もが日の当たる表側とその背面の裏側を持っているということが描かれている作品である。

 原作の短編小説は第157回芥川賞を受賞した沼田真佑氏の作品。テレビ岩手開局50周年記念作品ということで、舞台は岩手県の盛岡である。

eiri-movie.com

 埼玉県から盛岡に転勤してきた今野修二(綾野剛)。おとなしく影の薄い…でも真面目な若手サラリーマンである。どうやら医薬品卸販売業の会社に勤めているようである。淡々と仕事をこなす中で、ある日、物流部門で「課長!」と呼ばれている日浅典博(松田龍平)と出会う。彼はちょっといい加減でお調子者。段ボールを解体するのが誰よりも早いことから、パートのおばさんたちに「段ボール課長」と言われるようになりそのうちニックネームが「課長」になったという人物である。

 ひょんなことから(というより、日浅のほうから積極的に接するようになるのだが)親しくなる二人。日浅は夜、今野の家にフラリと現れ、酒を酌み交わしたり、渓流釣りに連れて行ったり…。

 そんなある日、日浅は突然会社を辞めて姿を消す。今野は思い当たるところを探すが見つからない…。諦めて日常に戻った今野のところに、ひょっこり日浅は顔を出す。冠婚葬祭の互助会の会社の営業で働いているというのだ。

 再び交流が始まる二人。どんどん距離が縮まり…。今野は驚くような行動に出る(が、ネタバレになるから言わないでおく)。

 ある日、ノルマ達成のために、互助会へ入ってくれないかと頼みに来た日浅に今野は快く入会する。今野は日浅に特別な感情を抱いている…のは日浅も知っている。…そのあたりからのこのシチュエーション。

 

多くの人の人生を変えた3.11

 そして、2011年3月11日がやってくる。

 以来、日浅とは音信不通となる。

 今野の会社には、日浅に営業に来られて互助会に入ったり、金を貸していたという人が現れ、日浅を探していると聞く。日浅を探そうと思えば思うほど、今野の知らない日浅の姿が見えてくる…。一緒に暮らしていると聞いていた日浅の実家に行くと…父親から思いがけない話を聞くことになり…。

 

 映画は核心的な部分があるようで明瞭ではないのだけれど、登場人物の心情に触れようとするとグッと詰まるものがある。そういう描き方がキレイだと思った。淡々と進行するストーリーなのであらすじはここまでにしておこう。物語は思いのほか今野の心の奥へ進行していくのでお楽しみに!

 

美しい自然の中で人は緊張した心をほどく

 今野と日浅の関係を深めることになったのは[釣り]だと思うのだが、二人が釣りをするシーンは岩手県の自然豊かな景色がとても美しく、互いに何の利害関係もない、ただ純粋に気持ちを通わせる心地良さが伝わってきた。よって、二人の関係は(裏側で繋がっていたわけではない)と思う。

 日浅が3.11を機に消息を絶ったせいで、今野は彼の裏側を知ることになった。そういう突然の、突拍子もない、世の中がひっくり返るような出来事に遭遇すると、人は思いもよらない場に連れて行かれるのである。

 

 今野に「人の裏側を見るんだよ」とどや顔で言い放った日浅こそ、震災をきっかけに裏側をあらわにされてしまっているという皮肉。

 人間ってなかなかねぇ…。思い通りには生きられないものだねぇ…。

 

オモテもウラもあってこの世なんだ

 人には表と裏の部分があるはずで、それは誰もが持っているのだと思う。裏…というから普段は周りの人から見えないだろうけれど、なにか起きた時に、オセロの駒がひっくり返るように裏側が現れるってことがあるのだろう。

 裏と聞くと、良くないほうと思われがちだが、実は陰徳を積んでいる人もいるわけで…。そういう意味であれば、本人が隠そうとしているほうが「裏」なのだろう。

 そんな表と裏がハラハラ落ちる葉のように見え隠れしながら人生を生ききるしかない。そこが人間らしさだし、個性だし。

 この映画を観て、良寛さんの句を思い出した。

 「裏を見せ 表を見せて 散るもみじ」

 

 おっと、山田邦子のギャグも思い出した。

「おもてなし、裏があっても、おもてなし」

 

 人は良いところだけじゃあない。日の当たらないところがあっていい。それでいいんだ。

 オモテがあるのはウラがあるから。

 ウラがあるのはオモテがあるから。

 

 

追伸、中村倫也くんが超かわいかった。

 

★みじん子レーダー【映画】影裏
●ドラマティック度:★★☆☆☆
●鑑賞後の心地良さ:★★★☆☆
●ドラマの重量感:★★★★☆
●涙活度:★☆☆☆☆
★岩手のいいところ(オモテ)と人間の裏側のコントラストがイイ134分