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【映画】大いに大人に抗ってほしい! -アニメ『ぼくらの7日間戦争』-

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大人と戦う!気骨のある子供たちはまだいるのか…

 『ぼくらの7日間戦争』は我が家のJKが小学生の頃にドはまりした本だ。以来、ぼくらのシリーズはウチの本棚にずらり並んでいたのだけれど、先日の大掃除の時にBOOKOFFに出してしまった。もう、そういう年齢じゃないのかな…。

 と、ちょっと寂しかったものだから、今回、アニメ版『ぼくらの7日間戦争』が上映されるということを知って、試しにJKに「観る?」と聞いてみたら「観る!」と。宮沢りえが声で出演するという。近所の映画館へ行った。

  今さら、あらすじを書くつもりはない。『ぼくらの~』シリーズは、大人の管理教育、ご都合主義に強制された子供たちのレボリューションを描いている。1988年に上映された実写版は宮沢りえちゃん女優デビュー作で、キラッキラに輝いていた。三井のリハウスのTVCMに白鳥麗子という名で登場し「あの美少女は一体誰なんだ?!」と話題となった当時を思い出す。名前からして美少女やん。本当にかわいくて透明感があって、その衝撃は忘れられない。

 

 子供たちの革命!たる『ぼくらの7日間戦争』が、令和時代にアニメ版として生まれ変わった。物語のベースは同じで、大きく違うのは子どもたちの年齢設定、宮沢りえ版は中学生だけど、アニメ版は高校生。大差ないと思うだろうが、この差は大きい。なんだかんだ言っても中学生はまだまだ子供だけれど、高校生は子供半分&大人半分、しかも自らのアイデンティティーに対して深く考え始める難しい年ごろだ。30年前とは大きく変わった環境、そして環境に大きく影響を受けている人間関係、、、今の時代ならではの背景が盛り込まれている。

 

7dayswar.jp

 映画を観て思ったのは、「今の子供たちは大変だなぁ…」っていうこと。人権も個人の尊重も、私たちが子供だった時代よりはうんと理解されるようになっているはずなんだけど、映画を観て、戦士たち(物語で登場する高校生たち)は、個人的に抱える問題が少々ややこしい。最も、面倒な問題がなさそうなのは主人公の鈴原守(北村匠海)くんぐらいじゃなかろうか。彼は自分の存在を(誰も知らない)と自虐的に卑下するいわゆる隠キャタイプの青年だが、ちゃーんと光るモノを持っている。歴史オタク(とくに世界史の軍事史にやけに詳しい)である。やはりここでも『オタクは基本、幸せに生きる力を持っている』という我々Type-Bシスターズの持論が証明されている(笑)。7日間の立てこもり戦で、強行突破しようとする大人たちにあらゆる戦術で対抗したのは鈴原守の戦術の知識である。

 

 で、なんで「今の子供たちは大変だ」と思ったのかというと、やはりSNSに尽きると思う。SNSは人間関係をややこしくしてしまう。表の顔と裏の顔…。本来、誰でも持っている闇の部分を、世界中にさらすことができるデジタルの「足跡」が、彼らを互いに警戒させる。表向き、匿名で出せるといっても、闇の核心は世界中に晒すのだから。それらを目にして、他人事と思えればいい。でも、これだけの数の闇が投入され、目にすれば、「世の中は怖い」「世間は怖い」と潜在的に思ってしまうだろう。

 そのあたりの難しさが、令和版の『ぼくらの~』では描かれている。ほかにも、ダイバーシティインクルージョンとか…。一見、世の中にとって理解を深め、優しくなっている風であるけれど、なんだか、今の世の中は、実は「建前が先行して本音では生きにくい」のではないかとさえ思ってしまう。

 それにしても、大人に抗える気骨のある子供たちを探す方が大変なのではないかな、と思う。今の子供たちは実に大人しい。大人の言うことを聞く、、、わけじゃあないけれど、とにもかくにも大人しい。。。私たちが子供の頃に身近にいたオラオラ系のツッパリたちは絶滅危惧種、、、いや、絶滅してしまったように思う。

 大人の私から言わせて欲しい。「反抗してもいいのだよ」と。反抗しても無茶しても許されるのが子供時代。それを「あぁ、子供だからね、」と笑って許せない大人が悪い。私は、子供が子供の頃をたっぷり味わうことができるから、大人になれるのだと思うのだ。だから、『ぼくらの7日間戦争』も中学生ではなく高校生が戦いを挑まねばならなくなっちまったのだ。世の中は、子供に早く「大人らしく」を求める一方で、どんどん大人になりづらくしている。子供たちにもっと融通を効かせようよ、大人の皆さん。。。

 

 時代の違いとともに宮沢りえ版と令和アニメ版が比較できるので、改めて見比べてみるといいかも。

 

 宮沢りえ版も令和アニメ版も、戦いのキーマンは女性である。ジャンヌダルクだって女性だったし、オスカルだって…(笑)。いつの時代も、戦いの勝敗を握るのは女性の登場か?と思ったりする。

 戦場に行くのは普通、男性だと言っても、それを支えるのは女性だ。野戦病院で戦士たちのケアをするのは女性のナースだったりしたし、戦地慰問に出掛けていたのも女性が多かったり。

 男性の士気を上げるのが女性だから、、、なのか、今の時代では、そんな性差を言うことさえNGなんだろうけれど、「違い」や「差」があってこそ、相乗効果というものは生まれるわけで…。

 しかも『ぼくらの~』のように、かわい子ちゃんが指揮を執ってくれたら、そりゃみんな頑張るでしょ。世の中は、そういうものです。そういうものだという理解から、その次(未来)を考える方が面倒じゃあない。そうだ、そういうね、、、本音というか、人間の性(さが)みたいな、本能みたいな、性質を、理性で理想に近づけようとするから厄介なのではなかろうか?

 

 アニメ版『ぼくらの~』から、彼らが表向きの取り繕った人間関係ではなく「もっと本音で生きていい」というメッセージが聞こえてきたが、実際、そうしたくてもなかなかできないものだ。現実社会ではね、、、難しいのだよ。そんな理想があってもね、周囲を警戒し、気を配って生きている人たちには、ただの理想だとさえ思えてしまう。

 だからこそ、そういうことをひっくるめて、「じゃ、自分はどう、何を大事に生きていこうか」を考えること自体が大事で、周囲の理解なんてことは考えないで、自分の生き方についてちょっとだけ振り返ることができれば、『ぼくらの~』シリーズは、子供だけではなく大人向けの物語に変身するわけだ。

 

 あーあ、BOOKOFFに出さなきゃよかったかな(笑)

 

★みじん子レーダー【映画】アニメ『ぼくらの7日間戦争
●ドラマティック度:★★★☆☆
●鑑賞後の心地良さ:★★★★☆
●ドラマの重量感:★★☆☆☆
●涙活度:★☆☆☆☆

★早く大人になんてならなくていい、と思えた88分