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【映画】史実との比較より,コンプレックスという魔物と戦う姿が興味深い - 英国王のスピーチ -

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スピーチのシーンにハラハラ、ドキドキ・・・

 日テレ月曜深夜に放送される映画天国では、観たかったけど見逃した映画がときどき放送されるので結構チェックしているのだが、10月に『英国王のスピーチ』をやっていたので録画しておいた。

 『英国王のスピーチ』は第83回アカデミー賞作品賞を受賞した2010年の作品。もう10年近くまえになる。現在の英国女王であるエリザベス2世の父君、ジョージ6世が幼少時から悩まされていた吃音を言語聴覚ライオネル・ローグのサポートを受けて、克服するまでの姿がローグ氏との友情と共に描かれている。

  歴史モノとはいえ、エンタメ向きの映画なので史実をもとに着色されている部分がけっこうあると思う。で、それでいいと私は思う。なんといっても、現在起きていることですら、私たちに公表されていることは事実とは異なることだらけの世の中だ。歴史学としてしっかり研究する人ががんばって事実を追求して欲しいけれど、エンタメのコンテンツにするならば、私たち観る者へのメッセージ性を大事に、着色しちゃってかまわないと思う。なんといっても、その最たるものが(12月だからね、)忠臣蔵でしょ。あの仇討ち物語を史実そのものでやっちまったら味気ない。エンタメはドラマティックでないと。トキメキが大事だ。

 

 で、この『英国王のスピーチ』をエンタメとしてみると、なかなか面白い要素が盛り込まれている。なんといっても実在した英国王。位の高い人が、なんと吃音に悩まされていたという親近感。しかも、本来は国王になるはずではなかったのだが、兄のエドワード8世が道ならぬ恋を貫くために1年足らずで退位してしまい、結果として国王に就任せざるを得なかったという運命。そのあたりだけを突っ込んでもひとつの映画ができるドラマティックな人生である。

 

 吃音そのものは今では医学的にもだいぶ解明されていて、そのタイプと原因がいろいろあるみたいだから難しいことは端折るが、人は何かしらのコンプレックスを抱えていることは多く、それが誰から見ても明らかなものであればあるほど本人のプレッシャーは大きいのではなかろうかということがこの映画を観ると分かる。

 例えば、出べそ、、なら、服を脱がなくちゃ分からないし、味オンチだって食事を共にしなくちゃ分からない。10円ハゲだって髪を伸ばせば気づかれない。・・・でも、発語は会話をすればすぐに分かってしまうものだし、大衆の面前でスピーチをする機会が多い国王ともなると、言語障害は単なるコンプレックスでは片付けれられない試練だと思うわけだ。

 そういう過酷な試練を抱えたジョージ6世が、なんとしてでも、肝心な、、、第二次世界大戦の開戦に伴って大英帝国全体へ向けたスピーチを成功させたいと願う気持ちは並々ならぬものだろう。

 その困難を言語聴覚士のライオネル・ローグとともにどんな経緯で克服していったのかが見ものである。

 

 コンプレックスとなるものそれ自体よりも、コンプレックスを抱え込む自分の心の奥のネガティブな思い込みに向き合うことからコンプレックスの克服は始まる。ということが、映画を観て感じるところだ。

 深く傷ついていて、悲観していて、どこかで諦めている対象が、コンプレックスとなる物事ではなく自分自身であることに気づくこと。そこから、自信の回復が始まる。

 

 私の場合、たとえば鼻が低いとか、脚が太いとかから始まって、最近では記憶力がめっぽう弱いとか、髪にコシが無くなってうねっちゃうとか、老眼鏡が無いと本が読めないとか、、、コンプレックスを挙げたら数えきれない。若いころ、これらすべてを抱えていたら、もしかしたら引きこもりになっていたかも?!しれない。

 が、年齢を重ねるとともに培われていくのはおばさん根性というあきらめの境地である。「だれにどう見られてもかまへん、かまへん」という図々しさが増強されていくのである。これは、老いて衰えていく者たちのための防御機能だ。いちいち敏感な自意識に応じられるほどエネルギーは残っていない。これを鈍感力とでもいったらいいのか。

 

 そんなお気楽にはいかない国王陛下のコンプレックスが克服されていったのは、「私は私以外の何者でもない」という自信であるはず。そして、自信喪失とは自分で自信を手放すことだ。それが分かれば、誰だって自分への自信を確信できるようになる、と思いたい。

 

 ちょうど時代も新しくなり、先日、令和の天皇ご即位&パレードで盛り上がった。公人として生きていかねばならない人たちは、ごくごく個人的なコンプレックスなどに向き合っていられない。そして、即位の礼から大嘗祭、パレード、などに至る過程で堂々とご立派に務められている天皇皇后両陛下のご立派な姿に、令和時代の平和と安寧を期待したい。

 

★みじん子レーダー【映画】英国王のスピーチ

●ドラマティック度:★★★☆☆

●鑑賞後の心地良さ:★★★★☆

●ドラマの重量感:★★★☆☆

●涙活度:★☆☆☆☆

★コンプレックスの克服と共に自分への自信を手に入れていく姿に勇気がでる118分